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BESTOWERS
【ファンタジー 官能小説】

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Invasion U-1

 目を開いてまずしたことは、舌打ちだった。

 薄暗く湿った石造りの部屋。全くエイダには見覚えのない場所であった。正面の壁には、見せしめのように彼女の武器、名前とは対照的に無骨な棘を生やす鉄球、『星』が置かれていた。

 いちいち記憶の海に潜らないでも、気絶する前の記憶ははっきりしていた。忌々しい大男の姿が脳裏に浮かぶと、忘れていた鈍痛が胸に沈む。

「……畜生」

 胸への痛みか、敵への罵倒か、それとも自己嫌悪か。自身ですら完全には理解し得ないつぶやきを零す。胸の鈍痛は、敵の一撃によるものだ。心臓の鼓動に揺られて、エイダの胸は痛みを体に送り込み続ける。だが幸い、痛みこそ感じるものの、どこの骨が砕けたということもないようであった。胸甲を叩き割るほどの一撃を浴びてその程度で済んだのは、ある意味で幸運と言えた。しかし五体が無事である代わりに、今のエイダは体の自由を奪われている。手には木製の手錠が架けられ、天井から垂れる鎖によってその場から動くこともできない。気絶する人間を寝かせておくには随分と乱暴な処置だが、それこそがいまのエイダの状況を現していた。

(奴のあの技……あれは……)

 自らに敗北を刻み込んだ敵の一撃に思いを馳せる。見たこともない構えから繰り出される一閃は、彼女の理解を超える速度であった。仕手が魔族だったとはいえ、到底人間の業が到達することのできない領域のものであった。

「ふン……はぁ……」

 空想の中で男の業に思考を投じていると、ようやく体の異変に気づいた。熱いのだ。そして平衡感覚がやや狂っており、ふらふらと世界が揺れている。まさに酩酊状態であったが、酒を飲んでもここまで酔ったことはエイダの経験にはなかった。何より、酒に酔っても今のように下半身に湧き上がるような熱さを感じることはなかった。

 体の異変に気が付きつつも、エイダの関心は記憶の中の戦いに向く。瞬時に訪れた敗北を演出したあの業、神速の一閃を記憶に描く。

 一体どれほどの鍛錬の末、あの境地に辿り着いたのであろうか。あの業を前にして、エイダにはその返しが思いつかない。回避は不可能、防御も不可能。まさしく手も足も出ない。今の状態では、例えあと100回戦ったとしても、同じようにエイダはミドルード城の床に這い蹲っているだろう。

「おい」

 いつの間にか、その時のことを鮮明に思い出そうとしたエイダの瞼は閉じられていた。突如投げかけられた声に瞼を開くと、そこには閉じた瞼の先にあったものと同じ顔が映っていた。

「ふん、良い体だ。雌としても奴隷としてもな」

 アルバーメフの視線は、容赦なくエイダの体に突き刺さる。身長の割にはやや小さめの乳房は、小ぶりであるが故に綺麗な形を保っている。腰、腹、そして足には余計な肉は付いてはいないが、だが痩せ細っているわけでもない。本来なら衣服で覆い隠されるエイダの素肌は、今は一糸まとわぬ姿で男の前にさらけ出されていた。

「チッ……」

 二度目の舌打ちと共に、不機嫌な顔を隠そうともせずエイダはそっぽを向く。体を隠そうにも、手は鎖で縛られ、強制的に両手を掲げる体勢になっている。

「あんたら、何者だ。あんたは確か、ボルジアの騎士団長だろう。……魔族がどうやってそんなところまで潜り込んだ」

 自分をどうするつもりか、などというわかりきった質問をエイダはしなかった。代わりに、彼女の推測からの疑問を投げかける。ボルジアの王立騎士団が、扇動家たるラスプーチンによって無茶な人事や蛮行に及んでいるという話は諸国に広まっている。特に最も大きな話題となったのは、名門貴族の子弟が歴任していた騎士団長の座を、誰ともわからぬ新参の騎士に任せたというものだ。噂によればその者は恐ろしい程の巨体で、名をドミンゴと言うらしい。

「よく知っているな。……まあ、年中情報を嗅ぎまわっているお前らなら予測できん話でもないか」

 敢えて情報を隠そうともしないのは、圧倒的優位な状況にある余裕というよりは、この大男の性格のように思えた。エイダとの戦闘で破損したからだろう、男は前進を覆うプレートメイル姿ではなく、簡素な衣服を身に着けているだけだ。大陸の帝国においては貴族階級である魔族が、このような飾り気も何もない衣服を身に着けて歩きまわるということからも、この男の性格が窺える。

「さて……」

「なッ……!?」

 だからこそ、男は何の情緒もなしに簡素な衣服から伸びる腕をエイダの股へと伸ばした。するりと股の間に潜り込んだ男の指が、エイダの秘裂をなぞる。

「お前……」

 羞恥と怒りで、エイダの顔は肉食獣そのままの獰猛さを取り戻す。だが、縛り上げられていては何もできない。

 アルバーメフは簡単にエイダの股から手を離した。その指は、エイダの秘裂から漏れ出た愛液によって濡れている。エイダはそれを見て瞬時に顔を朱色に染める。

「準備はできているようだな」

 右手の湿り具合を確かめるように指を動かしていた男は、ただそれだけ呟くと、衣服をずらし、隙間から自らの怒張した肉棒を取り出した。エイダはぴくりと眉を動かしたが、特に動揺することもなくアルバーメフを見据える。

「ハッ、女捕まえたらそれしかすることないのか?」

 口角をやや上げ、馬鹿にしきった声色で男を挑発する。

「お前は俺に負けた。敗北したものを征服するのは勝者の権利だ」

 男の表情は、鉄で作られた仮面のように動くことはない。



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