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【言の葉―リストカット―】
【エッセイ/詩 その他小説】

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【言の葉―リストカット―】-1

始りはあの日

あいつが毎日使用するソレ

ただなんとなく、痩せた手首に当てた

切れ味鋭い刃先は
軽く触れただけで、幼い子供の柔らかい肌に血を滲ませた

滲みでた血が赤くて

ただなんとなく、刃先を当てている方の手を引く

シュッという、音

みるみる視界が赤く染まる

あいつに散々汚された自分の血はもう、どろどろに黒いのかと思ってた

痛みはなく

ただただ

目の前に広がる紅が

綺麗で

それが、始まり


なにが原因かなんて、もう忘れた

なにが『痛い』かなんて、もう忘れた

どれが感情かなんて―………


ソレはもう、捨てていた

刃物しか、信用出来なかった

アイツから授かった忌々しいこの体を
傷つけて傷つけて傷つけて傷つけて傷つけて

繰り返した
刺青も彫った
初めて『痛い』と思った
でも、足りない

足りないから

手首の無数の真新しい傷の上に、彫った

痛かった

叫んだ

喉から絞り出すような声で

でも、足りない


痛みが欲しかったんだ

だから、傷つけた


でも
『イタイ』のは心だけで

ヌケダセナイ

タスケテ

これさえも、言えない

死のうとは思わなかった

痛めつけたい だけ

あいつらになにされようが、痛くないように

続く日々
増える傷


ヌケダセナイ


でも

終わりはいつも突然

鳴り出した電話
『もしもし?〇〇ちゃん?落ち着いて聞いてね…ご両親が交通事故で―…』

ざまぁみろ
とも思わなかった
嬉し泣きするかなと思ったけど
それもなかった

ただ
あっけなくて


葬儀の帰り

幼馴染みが言った


『おかえり』


私はやっと開放された

やっと
泣けるんだ


ざまぁみろ


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