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氷の解けた日
【SF 官能小説】

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小型翼竜-1

 私は龍の谷にいた。私の生命点は100ポイントだった。
出発前に10タルト払って買った生命点だ。

 5タルトで行政で支給される一ヶ月分のお小遣いに相当するから、結構痛手な筈だが、私はあまり金を使うことがなかったので、結構貯蓄があったのだ。

 私の姿を見て、人間のアバターが悲鳴をあげて逃げて行った。
私は湖まで歩いた。
どうも歩き方がおかしい。
手足のバランスがうまくとれない。
そして周りの風景がおかしい。360度全部見えるのだ。

 だがゆらゆらしていて視点が定まらない。
私は自分の手や腕が長さが不揃いで伸びたり縮んだりしているのを見た。
色も象の皮膚のように灰色だ。
まるで酔っ払いのように龍の谷の大地をふらふらしながら歩いた。
景色がおかしい。
首を回さなくても好きな場所が見える。
だが見え方がおかしい。私は自分の目の場所を手で探した。
それは顔の中を流れるように動いていた。
いや、顔に限らず頭部全体を自由に赴くままに動いているのだ。
それに目玉の個数が2個ではない。
どうやら6個ある。
後頭部に1対、左右の側頭部に1対、正面に1対だ。
だが、それがだいたいの位置で、片目だけ頭頂に動いたり頬にずれたり、全く定まらないのだ。

 口は一応表面の下部についているが、唇はなく皮膚の切れ目のようでこれもときどきゆらゆら位置を変える。
耳はラッパのような形の物が1対ある。だが位置は左右対称ではない。
最初は目まいがしたが、慣れて来ると風景がだぶらずにきちんと見えるようになった。

 そのとき頭上を鳥のようなものが低く飛んで来て掠っていこうとした。
ビシッと私は瞬間的に右腕を鞭のように伸ばして、それを捕まえていた。
見るとカラスくらいの大きさの翼竜だった。
強く握ったときに潰れて死んでしまったらしい。
すると生命点が110点になった。
それにしても私の反射神経は非常に速いものになっていたので驚いた。
私は自分の手指を見た。
太く長く節くれだっていて古木の枝のようだった。
握力も想像以上に強いに違いない。

 周りが騒がしくなった。それもその筈、今のと同じ小型の翼竜が群れをなしてこちらに向かって飛んで来る。

 私を襲おうとしているらしい。耳障りな鳴き声を立てて数百羽の翼竜が集中攻撃して来た。

 普通のゲーマーならここで仮想空間から撤退するところだろうが、私はここに戦いに来たのだ。
私は逃げずに戦おうと思った。

 


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