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氷の解けた日
【SF 官能小説】

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リアル・ゲームへ-1

 ある日、今まで簡単な挨拶だけで済ませていたアニョンが何年かぶりに話しかけて来た。
 アニョンは顎の先くらいまでのショートヘアで前髪の間から涙袋を膨らませて私に笑いかけた。
 背も伸びて大人びた感じで、もう立派な女性という印象だ。
胸も大きく張っていて足も私より長く伸びていた。
まるでサバンナを駆けるインパラのような野生美溢れる肢体を持っていた。

「ハヤテ、まだDゲームってやってるの?
なんか前より逞しくなったような気がするね」

「それよりアニョンもずいぶん大人の女性になったね。
最近特に美しくなって眩しいくらいだよ」

 アニョンが笑って私の背中をどんと叩いた。

「ハヤテがリアル・ゲームの世界に来たら強いんでしょうね。
そんな気がするよ。私はもう龍の谷には行かずに、闘技場で戦っているんだよ。
色々なモンスターと戦って倒すとモンスターの生命点が掛け率分もらえるんだよ。
負けそうになったらギブアップして罰金の生命点を少し支払う。
生命点は少しだけ換金して現実世界で好きなものを買ったりするんだ。
 生活に必要な経費は行政が負担してくれるけれど、おしゃれなものとか流行の遊び道具とかはそういう小遣いで稼がなきゃね」

 私はリアル・ゲームでは戦えば生命点が上がることを知った。
Dゲームも得点が上がるがただ上がるのを喜んでいるだけで、現金が稼げる訳ではない。するとリアル・ゲームの世界は大昔の遊戯のパチンコのようなものか。
生命点がパチンコの玉だとすると分りやすい。勝てば沢山集められて換金できる。

「アニョンはどんな武器で戦うの?」

 私はなんとなくアニョンが戦っている姿がイメージに浮かばなくて聞いてしまった。
アニョンは眉間をちょっと寄せて鼻頭に人差し指を当ててきゅっと一押しすると言った。

「これは絶対口外しないでね。ハヤテにだけ教えるけれど、楯と剣なの。
 そのスタイルの人は結構多いけれど、それでも私のアバターが特定されて絞り込まれてしまうので秘密だよ……」

 その後、アニョンは違うグループの所に行った。
私は時間が来て皆がロータス・ハウスに戻り始めるまで、闘技場のことを考えていた。


 オンラインでカリアにそのことを告げると、猛烈な反発が来た。

「闘技場はいきなり初心者は無理です。入れてくれないのです。
それにリアル・ゲームの世界では、ハヤテは不安定だから人間離れした姿になってしまいます。
単独で行けばスライム状の不定形になりますが、今はマチモリと一緒ですね。
それでも二足歩行は無理で四つん這いで走り回ることになるのです。
私が加わって漸く二足歩行が可能な体型になりますが、かなりグロテスクな様子になり、モンスターの中でも不細工な部類になってしまいます。
それでも行ってみたいですか?」

 いつも私には丁寧な口調のカリアが強い調子で反対したのは、リアル・ゲームの空間内ではアバターの形状が極端に歪むことだった。
更にカリアは言った。

「私はあなたの形状を維持することに全精力を傾けなければいけないので、そこではそれ以外の助力ができないのです」

 だが私はDゲームの世界ではこれ以上時間つぶしもできない状態だった。
新しい挑戦に胸が騒いでいたのだ。
後で考えれば馬鹿なことをしたと思う。
Dゲーム内でも工夫すれば結構楽しい時間が過ごせたはずなのに。




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