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伝えたかったっこと
【エッセイ/詩 その他小説】

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伝えたかったっこと-1

8月○日
真夏だっていうのに。
寒い。
昨日までの暑さは何処にいったって言うんだ?
半袖ではいられない。
厚手のジャケットを着て、
毛布にくるまった。
しかし寒さは和らがない。
震えが止まらない。

今日は一日中こんな状態。
外にも出れず、誰とも会えない。
なんだか心の奥の方まで冷え切ってしまったような…。
そんな感覚だった。

誰かに縋るようにメールを送った。
「元気?今、暇?」って。
しかし誰からも返事が来ない。
なんだか更に苦しくなった。
凍えてしまいそうだった。
アノ子なら、
きっとアノ子ならって電話を鳴らしてみた。
いくらコールしても出てくれない。
涙が零れてきた…
僕は今、誰かに必要とされているの?
生きている意味ってあるの?
‐ボクニハダレモイナイノ?‐
そんな不安で頭がいっぱいになった。

今まで僕は友達の為に何かしてあげただろうか?
今まで僕は彼女の為に何かしてあげただろうか?
今まで僕は泣きついてきた子を優しく包んであげただろうか?
今まで僕は・・・いったい何のために・・・
一人で泣いていた。
こんな姿、誰にも見せなれないね?
お気に入りのバラードを聞いて。
自分は可哀想な奴だって思い込んで。
だけどそんな考え方している自分が許せなくて。

誰かに泣きつきたかった。

僕は人前で涙した覚えなんてない。
それがダサいと思っていたから。
だけどどうだい?
一番泣き虫なのは僕じゃないか?
本当は誰よりも弱虫で、怖がりで…

思えば、いつだって必要としていた。
友達、家族、恋人。
誰もいないと僕は凍死してしまいそうなんだ。
そんなことに今更気付くなんて。
バカだよね。
こんな時、思い出すのは良い思い出ばかりだよ。
ただ過ぎていった毎日。
僕は幸せだったたんだね。
きっと君達がいなければ、いつも泣いていたんだ。
ゴメンネ。
アリガトウ。
スキダヨ。
アイタイナ。
今は全部伝えたい。

伝えたい言葉がたくさんあるのに、
誰にも、誰にも言えない。
伝えられない。

自分が落ちて行く気がする。
このまま覚めない眠りについてしまうんじゃないかって思うほど。

着信音。

一瞬、何のことだかサッパリ分からなかった。
握り締めていた携帯電話。
鳴り響く彼の唄。
我に返り、通話ボタンを押す。
「もしもし?今、大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ。」

嬉しかった。

いつもの。
当たり前な会話。当たり前な動作なのに。
すごく嬉しくって。
話しているうちに、なんだか
「ありがとう。」
って自然に言えちゃう気がするんだ。
外の寒さはいつの間にか落ち着いたようだ。
僕はそんなことにも気付かずに話をしている。
日付が変わっても、充電が切れそうになっても。
僕は繋ぎとめていたかった。
「ごめんね。忙しかったでしょ?」
なんて言わないで。
僕がこの電話でどれだけ救われたか。
「そんなことないよ。ありがとう。」
心を込めて、素直に言ったんだ。
「今度、また遊ぼうね。」
電話を切ったあとに見た夜空は。
少しキレイに見えました。


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