投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

「カオル」
【その他 その他小説】

「カオル」の最初へ 「カオル」 39 「カオル」 41 「カオル」の最後へ

カオルD-7

(やっぱり寝ちゃうか)

 倒れたような姿勢のまま、寝息をたてている。そんな姿に、真由美は同情を禁じ得ない。

 学校が終わってのきつい練習。その分、寝るまでの時間が削られてしまうのだから、帰宅後にも余裕がない。
 だから、食事中に自分のことが話題にのぼっていたにも関わらず、会話に加わろうとしなった。

(ううん、入る余裕もなかったんだ)

 それほど、精根使い果たしたのだと真由美は思った。

(でも、これって…)

 薫の寝顔を見つめるうちに、新たな想いが浮かんだ。

 ──これで、薫を正常に導けるのでは。

 バレーを通じて、辛い練習や試合を仲間と共に経験すれば、自ずと友情が芽生え、強いては普通の男の子のようになるのではないか。
 少なくとも、今のような“女装”の嗜好は失せるかもしれない。
 そう想うと、偶然とはいえ母親の決断は自分の“方法”より遥かに現実的だ。

(でも…)

 再び疑念が湧いた。

 ──普通って、何だろう。

 薫が、世の中に害益となることを犯したわけじゃない。ただ、男の子らしくないだけだ。

(わたしは、それを異常なことだと思っている。そして、異常なことだと思いながら、自分の欲求を満たしたいために、さらに推し進めようとしている…)

 真由美は薫を見たまま、しばらく佇んでいた。






「カオル」の最初へ 「カオル」 39 「カオル」 41 「カオル」の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前