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「カオル」
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カオルD-10

(あれ?この人…)

 真由美の目は、ある一点に注がれた。

(この間まで、ウェーブのかかった髪だったのに…)

 そこに映っていたのは、前髪は切り揃えられ、肩にかかる真っ直ぐの髪だった。

「これって、ウィッグよね」

 前の髪型の印象が強かったためか、ずいぶんと違って見える。何より、清楚な感じだ。

(薫も、こんな感じに…)

 真由美の中に、抑え切れない想いが湧き上がった。
 その途端、彼女はリビングを飛び出して階段を駈けあがった。

「薫、入るよォ」

 真由美は、再び紙袋を持って、薫の部屋に現れた。

「う…ん。なあに?お姉ちゃん」

 薫はベッドの上にいた。
 午前中はバレーの練習で、昼食を摂ってから眠っていたようだ。

「後でさ、これを着けてみない?」

 真由美が、紙袋から中身を取り出した。

「なあに?それ」

 薫は、ベッドの縁に腰かけて見つめた。

「ウィッグよ」
「ウィッグ?」
「かつらよ。あんた、これ被ってよ」
「えっ!?これをッ」
「そうよ。全部着けて見せてよ」

 真由美は、半ば強引に薫を自分の部屋へと連れていき、服を脱ぐように言った。

「で、でもお姉ちゃん…まだお昼だし」
「何言ってんの!ここ最近、着てなかったじゃない」
「そ、そうだけど…」

 薫には抵抗があった。
 ようやく、バレーにも愉しさを見出だして仲間もできた。
 何より、嶋村直樹という存在が大きかった。

 しかし、この想いは真由美に届かない。

「いいからさ!最高に可愛くしてあげるから」

 薫はとうとう、押しきられるカタチで服を脱いだ。

「はい、これ」

 水色のボーダーのショーツとブラ。この前のと違う。

「お姉ちゃん、これって?」
「ああ、それはわたしの」

 薫が、戸惑いの表情になる。

「いいの?ボクが着けて」
「別に。わたしは構わないわよ」
「でも…」

 なおも困り顔の薫。

「あんたが“変なこと”して汚さない限り、わたしは平気よ」
「……?」
「いいから、着て」

 結局、真由美の下着を身に付けた。


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