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ゼビア・ズ・サイドストーリー
【ファンタジー 官能小説】

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マリッジブルー-1

「はぁ〜…」

 ファンの国のお城の一角……自分にあてがわれた部屋でステラは大きくため息をついた。
 肩までのふわふわした赤毛が風に揺れ、蒼い瞳が物憂げに曇っている。

 今朝、延期になっていた結婚式を6日後にすると報告があった。
 本来ならとっくに終わっている結婚式だったが、タイミング悪くファンに魔物が攻めてきてそれどころではなくなったのだ。
 その話は置いておいて……その事件のせいでステラは今更ながらのマリッジブルーに陥っていた。

 ステラはファンの中貴族の次女で、城には姫付きの召し使いとして3年前に来た。
 しかし、いざ来てみると仕えるべき姫は家出していた。
 ハッキリ言って驚いた……妾の子とはいえ一国の姫が『退屈だから』と言う理由で家出(この場合は城出になるのだろうか?)など……どんな我が儘な姫なのだろうかと思っていた。
 そして、半年前に急に戻ってきた時にその理由が分かった。
 戻ってきたキアルリアは輝くばかりの美しさと行動力、そしてハッキリとした意思を持っていた。
 仕えるべき姫が居ない事で、ただの召し使いとして城で働き、国王の双子の弟であるギルフォードに見初められ、プロポーズされて素直に頷いた……流されてばかりの自分とは大違いだ。
 しかも、彼女はこの間の騒動では各国の王を抑えて総指揮までとった。

(わたくし……このまま結婚していいのかしら……)

 ファンの国王であるラインハルトは同性愛者なので、世継ぎを産むのは自分なのだろうが、そんな大事な役割を流されてばかりの自分がしていいのかと思う。

 それと、もうひとつ……どうしても引っかかる事がある。
 ギルフォードの視線だ……キアルリアが帰ってきてからのギルフォードの視線は常に彼女を追っていた。
 キアルリアが帰って来た時には既にプロポーズされてたし、彼女も自分を慕ってくれているが、近親婚が有りの国なのでギルフォードがキアルリアを愛している可能性がどうしても捨てきれない。
 何よりも、自分よりキアルリアの方が、この地位に相応しい気がしてならないのだ。

「はぁ〜…」

 再びため息をついたステラは足元に寝そべっている大型犬サイズの黒猫に話かける。

「何も聞かないんですの?」

 自分がこんなにため息をついているというのに。
 黒猫……魔獣のグロウは金色の目を開けてステラを見上げる。

『どうせギルの事だろ?』

「う……」

 図星。

『ギルがキアルリアを愛してるんじゃねえかってか?』

「……もういいです」

 こんなにズバズバ図星を指されたら悩んでいるのが馬鹿らしくなってきた。
 かといって、ブルーな気持ちが払拭された訳では無いのだが……ステラはまたもや大きくため息をつく。

「待ちやがれっ!!」

「待たねえって!」

 その時、窓の外からキアルリアと、その恋人のアースの声が聞こえてきた。
 ステラとグロウは何事かとテラスに出てみる。
 青いドレスを翻して逃げるキアルリアを、アースが追いかけていた。


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