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凶眼
【制服 官能小説】

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〜第4章〜 土曜日 魔鈴-1

 夕日がビルの影に没し、街が夜の顔を見せ出す頃。僕は繁華街の雑踏にのまれていた。
 思えば、占い師と出会った時もこんな感じだったろうか。あの時はアニメを見るために急いで帰ろうとしていたのだが、とても数日前の出来事とは思えない。
 本来今日も塾のある日だが、勿論サボりである。親にばれればそろそろ心配され様なものだが、これから待ち受ける運命に比べれば些細な事だ。
 そう、今の言葉に誇張はない。懐に手をやると、ジャケットの内ポケットから赤い宝石の首飾りを取り出す。
 凶眼―
 そこに秘められた魔力を得れば、文字通り女の支配者になれるのだ。
 凶眼に選ばれる、というのが具体的にはどういうことかわからない。おそらくこの力をずっと使えるということだろう。
 それがどういうことか。考えただけでも興奮が止まらない。
 例えば今すれ違った、ちょっと冷たい感じのOL。あの女も凶眼の虜となれば、見ず知らずの僕に跪き、股を開くのだ。
 気が急いて、知らず大股歩きになっている。電話で教えられたクラブは、どうやら歓楽街にあるようだ。日頃は近寄りがたいところだが、目的を考えればふさわしいのかもしれない。
 塾のあるカーメル繁華街を抜けると、派手な格好をした水商売らしき女性を見掛けるようになる。まだ宵の口だが、通りのあちこちで、肌も露わな女性が道行く男性に声をかける。レイヨール歓楽街が夜の顔を見せ始めたのだ。
 こんなところに来るのは初めてのことで、僕は見知らぬ街を彷徨っている気分になる。通りには風俗店のけばけばしいネオンが煌めき、繁華街とは明らかに異なる空気が流れている。
 でかでかとアニメの看板を掲げたお店の前で、僕は足を止めた。アイドルのような黒い衣装の金髪娘と白い衣装の黒髪娘が、サラリーマン風の二人組に声をかけていた。
 ―あれが噂のセクシーエンジェルか。
 プリティエンジェルのアダルトバージョンを、よもや歓楽街で見かけるとは思わなかったが、それでも自然と目が行ってしまう。
 ふと、プリティエンジェルの再放送を録画し忘れたことを思い出した。
 以前の僕なら大騒ぎする出来事だったろう。今でもアニメが嫌いになったわけではない。だが肉の魅力を味わった今、ただの絵ではとても満足できない。以前の僕とは違うのだ。
 そこそこの美人ではあるが、よく見ると顔も体型も、何より女の子達の雰囲気がプリティエンジェルとは似ても似つかぬものだとわかる。僕の視線に気づいた彼女達がこちらを向くと、媚びた営業用スマイルに怪訝な表情が浮かぶ。
 まぁ、当然の反応だ。僕が幾つに見えるか知らないが、少なくとも20歳以上には見えないだろう。未成年を誘ったら犯罪になるのは向こうのほうだ。
 足早にその場を去るが、周りの視線が気になり始めた。制服を着てくるほど馬鹿でもないが、大人の格好をしてるわけでもない。未成年がうろつき回っているのを警察に見咎められたら、面倒なことになりかねない。


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