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hangover
【OL/お姉さん 官能小説】

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コロと教育係-2

「痛ぇっ。榊さん、力入れすぎですよ」

大げさに痛がる西島の表情にちょっとだけ笑顔が戻る。

「アンタは落ち込んでるより笑ってたほうがいいわよ」

「え?」

「それ、美味しそうね。何飲んでるの?」

ビールは苦手だという西島が手にしていたグラスの中の、綺麗な青。あぁ、コイツのイメージにぴったりだ。爽やかな青。私にはないもの。

「コレ?チャイナブルー、だったかな?美味いですよ?飲みます?」

無邪気に差し出されたグラスを受け取って一口飲む。ライチとグレープフルーツで味まで爽やかだ。青はブルーキュラソーだろうか。

「西島っぽいね、コレ」

「オレっぽい?」

私が戻したグラスに再び口をつける。動きが止まる。

「どうした?」

「キスしちゃった。榊さんと、間接チュウ」

満面の笑みでよく小っ恥ずかしいこと言えるよなぁ。若い証拠なんだろうか。

「はいはいはいはい」

「あ。やっぱりさらっとスルーですか?」

西島から目をそらそうとしてチラっと目に入ってしまった腕時計。そういえば買い物行けなかったな。いいなぁ、西島は。見ていて面白いほど表情がコロコロ変わる。これだけ気持ちを素直に表現できたら、まだ私の隣であの人は笑っていてくれただろうか。って私、何バカなこと考えてるんだろう。深いため息をひとつついて1/3ほど残っていたジョッキの中のビールを胃の中へと一気に流し込む。

「榊さん?」

「お兄さん、注文いい?彼と同じヤツ」

西島は心配そうにこちらを見ていたけれど、私は気づかない振りをして、店員さんに声をかける。しばらくして店員さんが持ってきてくれた青い液体はジュースみたいで次々とグラスを開けてもまるで酔えなかった。

「榊さん、飲みすぎじゃないですか?また明日辛いですよ?朝も調子悪そうだったし…」

「大丈夫よ、このくらい。それに明日は土曜だし」

「や、そうですけど…」

「ほら、アンタも飲みなさいよ。割り勘だからね。多く飲んだもん勝ちよ?」

「そんな榊さんに勝てるわけないじゃないですか」

「なっさけないわねー、ホント。あ、西島、煙草吸っていい?」

そういえばコイツ。しょっちゅう喫煙室に来るクセに煙草を吸わない。ここに入るときに店員さんに喫煙か禁煙か確認されたときも西島は当たり前のように喫煙で、と答えてくれたけれど。

「どうぞどうぞ。そのための喫煙席ですから」

そう言って灰皿をこちらに差し出す笑顔が妙に大人っぽく思えて一瞬ドキっとする。

「すみません。もっと早くに気づけばよかったですね」

「ううん、大丈夫。ねぇ、なんで西島は煙草吸わないのによく喫煙所にいるの?普通吸わない人ってあの空間の匂いとか煙とか嫌がるじゃない?」

「喫煙所に行けば榊さんに構ってもらえるからに決まってるじゃないですか」

「あっそ」

…コイツに聞いた私がバカだったわ。

「でも喫煙所って楽しくないですか?なんか普通の休憩室にいるより喫煙所にいるほうが話はずむ気がするんですよね」

「そう?」

でもなんとなくわかるような気がした。休憩室の雰囲気より喫煙所のほうが好き。特に西島がいる時の喫煙所の雰囲気は明るい。いじられキャラの西島が誰かしらにいじられて笑いがおこる。ここ数日は喫煙所のこの笑いに助けられてきたんだ、私。

「でも西島ってイイコだよね。彼女ほんとにいないの?」

「いませんよー。榊さんオレの彼女になり…」

「ならんわ、ボケ」

「あー。また速攻却下のうえにボケだなんてひどいですよ。オレ、榊さんのために何もしてあげられないかもしれないけど、カラダだけは若いですよ?新鮮ですよ?」

「あー、そこに若さとか新鮮さとか求めてないし」

「えー1回試してみま…」

「試しません。言ったでしょ?オトナのオトコがいいって。年下には興味ない」

あぁ、またそんな顔する。でもすぐにくだらない会話が始まって。さっきちょっと感じてしまったユウウツな気分はどこかに吹き飛んでいく。

「よかった。少しは浮上できたみたいね」

「榊さんのおかげです。ありがとうございました」

「高いわよ」

「じゃあ今度食事でも」

「よし。回らない寿司食べ放題?焼き肉?フランス料理フルコースでもいいわよ」

「た、たけぇっ。カラダじゃダメ…」

「ダメ。カラオケ行くわよ。西島の奢りで」

自分が払うときかない西島をねじ伏せて最初の約束通り割り勘で支払い、居酒屋をあとにしてカラオケへ。西島の声は好き。ノリのいい曲でもバラードを歌わせても上手いと思う。言うと調子に乗るから言わないけど。2時間ほど飲みながらお互い熱唱。あまり酒が強くないという西島は早々にソフトドリンクに切り替えてしまったけれど私はサワーやら何やら飲み続けた。

「オレ、榊さんの声好きです」

「ありがと。でもおだててくれても何もでないわよ」

「いや、こうして一緒に食事したりカラオケ行けるだけで幸せです」

「はいはい。そろそろお開きにする?」

時計を見ると日付はとっくに変わっていた。さすがに身体がだるいような気がする。店を出たあたりから自分の身体の異変に気づいた。

「榊さん、大丈夫ですか?相当顔色悪いですけど…」

「…大丈夫よ」

気持ち悪い、とかそういうんじゃない。とにかくだるい。しゃべることさえ。

「オレ、送っていきますから」

「大げさ…一人で帰れる…」

足元がふらつく。あれ、おかしい。

「そんなフラフラで大丈夫じゃないですよ」

聞こえてきた珍しく怒ったような西島の声に驚く。次の瞬間西島に抱きしめられていた。

「ちょっと…何す…」

西島の腕の中、最後まで抵抗できずに私は意識を手放した。


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