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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』
【SF その他小説】

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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜第三部』-96

「まずい、罠だっ!!」
 通信の出力を最大に切り替え、エリックは叫んだ。
その途端。後方と前方に、無人二足ロボットが飛び出した。
エリックは素早く状況を把握すると、後方から出てきた無人機達へとマシンガンを掃射しつつ、もう片方の手でボムを投げつける。
同じく後方をカバーしていたアーゼンも、それに倣って射撃を始める。
『全員、通信の出力を最大に上げてっ!トレーラーを守るんだっ!!』
 前方でも、アルファの号令と共に反撃が開始された。
エリックはベルゼビュールをトレーラーの上に上らせ、視界を確保する。
前方も後方も囲まれているらしく、無人機は次々出てくる。
集団の中に飛び込むような戦法は、トレーラーを守るという性質上できない。
「建物の上から出てくる奴らも見逃すなっ!」
 横にある民家を乗り越えてきた無人機を撃ち落しながら、エリックが叫ぶ。
敵の爆発武器は、当たり所が悪ければ一発でトレーラーを行動不能にできる。
撃たれる前に撃たなければならない。
『撃つな。直ちに戦闘行為を停止しろ』
 先行部隊の声で通信が入る、が、当然無視してエリックは戦闘を続行する。
一瞬アレク機達の動きが止まった。そして生まれた弾幕の隙間から、無人機が沸いてくる。
「信じるなっ!撃ちまくれっ!!」
 空いた弾幕の穴を塞ぐ様に前方へマシンガンを乱射しながら、エリックが激を飛ばす。
一瞬の間を置いてアレク機達は動きを取り戻し、弾幕が張られた。
が、敵は途切れなく現れる為、キリがない。
このままでは弾切れを起こして全滅だ。
『アリシア、トレーラーを出して!全機、此処から脱出するよっ!』
 瞬間。いきなり駆動したトレーラーに、ベルゼビュールはなんとか踏みとどまる。
動き出したトレーラーに合わせるように、バフォールとアーゼン達も走り出した。
突破した方がリスクが少なくて済むという判断だろう。
「遅れたヤツは、巻き込まれても知らんぞっ!」
 エリックは通信で告げつつ、連続して後方にボムを射出する。
バフォールとアーゼン達は前方に群がる無人達を蹴散らし、トレーラーが残骸を押しのけるようにして速度を増す。
『前方、敵が途切れました。最大速度で行きます』
 こんな時でも淡々としたアリシアの声と共に、トレーラーは更に速度を増した。
後方に射出したボムは次々と爆発し、無人機の追撃を阻む。
無人機の群れが、後方に遠ざかっていった。

『………ふぅ…全体、速度落とすよ』
一安心、といったところだろうか。通信に乗って、アルファのため息が聞こえた。
トレーラーを囲むように歩きながら、アーゼン達もそれぞれ銃のマガジンを交換している。
「…まだ、これからが本番か………」
 未だトレーラーの上に居るベルゼビュールの中で、しんどそうに漏らすエリック。
まだ、中心部にも入っていないのだ。
『目標撃破。戦闘は終結した。繰り返す、戦闘は終結した』
 スピーカーからは、敵の撹乱と思しき通信が聞こえる。
恐らく陽動部隊も、これで苦しめられているだろう。
通信はほぼ敵に掌握された状態で、しかもこれまでにない知能的な攻撃。
「………はぁ…」
 ロクでもないところに来てしまったと、エリックは心底思うのであった。


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