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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』
【SF その他小説】

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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜第三部』-83

「あんた程の腕を持っていても、無理なのか…」
 青年の力量なのか機体の性能か、はたまた両方か…とにかく、戦闘力なら以前アルファに匹敵するものを持っていると、エリックには判る。
それでも恐らく、アルファの方が強い。それだけは譲れないエリックであった。
アルファはエリックにとって、絶対的な強さの象徴なのである。
『実を言うと、無人機相手って苦手なんですよね。何考えてるか判らないっていうか…』
 それはエリックにも判る感覚だった。先ほどの戦闘でも思い知らされたが、機械は味方を吹き飛ばすのに躊躇しない。人であればどんなに訓練された者であれ、ほんの僅かでも躊躇が生まれるものだ。盾にされた味方に銃を向ければ、引き金を引くかどうか考える時間が生まれ、それから規範や規律に従って引き金を引く。それも無しに引き金を引くのは人の心を持っていないか、そういう状況を徹底的に刷り込まれたタイプである。
「…しかし、それじゃあどうしようも無いだろう?」
 今の話を聞く限り、無人機の集団に勝てる見込みはなさそうだ。
『そこで、このトレーラーに積んである新兵器が役に立つんだそうですけど…ここ最近電波障害が酷くて、落ち合う場所に不手際が発生しちゃって…危ない所でした』
「どうやら知らない内に、事件解決の希望を救っていたみたいだな」
『あはははは……と、見えてきましたね。あれが僕らの乗ってるトレーラーです』
 会話を中断して、青年の声が指す前方のトレーラーに目を遣るエリック。
「………」
 絶句。エリックが目を遣った先にあったのは、以前アルファ達を乗せていた移動研究施設…巨大トレーラーだったのだ。
(まさか……!?)
 ベルゼビュールの歩みを進めながらも、エリックの心は乱れに乱れていた。
気付くべきだったという後悔と、まさかという疑念。
そんな事が頭の中を巡っている内にも、ベルゼビュールと青年のワーカーは巨大トレーラーの傍らへとたどり着く。巨大トレーラーの後方ハッチが開いた。
『中へどうぞ』
「…あ、ああ、判った…」
 内心の動揺を必死に抑えながら、エリックは研究員のものと思しき声に従い、ベルゼビュールを中へと進ませる。内部は格納庫になっているようで、見た目よりも広い。ワーカーの十機は十分格納できるスペースがあり、ワーカーを固定するアームロックの一つに、アーゼンが固定されていた。
「……!」
『…?具合でも悪いんですか?』
「…いや…大丈夫だ……」
『……なら良いんですけど……それじゃあ、適当に空いてるアームの所につけて下さい』
 問いかける青年になんとか答え、ベルゼビュールをアームロック付近へと移動。
ベルゼビュールが固定されたのを確認して、全モーターを停止した。
(落ち着け……もし此処にアルファが居ても、何も問題は無い筈だ……)
 いつの間にか噴出していた汗を拭い、エリックはベルゼビュールのコクピットから出た。
(今の所は味方だ……特に恨みも無いんだ…)
 自分に言い聞かせながら、ベルゼビュールを固定しているアームを伝って降りる。
ちらりと目を遣ると、青年のワーカーが固定された所だ。
(……………大丈夫だ…大丈夫だ……)
 エリックは青年のワーカーへと歩み寄る。頭を支配している疑念を払う為に。
と、反対側から、同じく青年のワーカーへと歩み寄る人物があった。
「……貴方は……」
 エリックを目にした途端、その人物は固まったように動きを止める。
それは見慣れぬ人物を見たという反応ではなく…
「アリシア、ただいま」
 アームを伝って降りてきた青年が、エリックを見て動きを止めているアリシアへと声をかけた。丁度アリシアの方を向いている為、エリックには背中を向けている。
銀髪の髪がさらりと揺れ、エリックの記憶を呼び起こす。
「……」
 エリックは、無言のまま早足で青年へと歩み寄る。
(恨んじゃいないと…思ってたんだがな……)
 様々な感情が渦を巻いて、逆に冷静になった頭で考える。
(それでも…)
 ぐっと、右の拳を握り締めた。
「……?」
 アリシアの目線に気付いたのか、青年がエリックの方へと振り向いた瞬間。
青年…アルファの金色の瞳が、エリックを捉えた。
(!!)
 エリックの頭で、感情が爆発して……
「貴様ぁぁあああああああっっっ!!」
「っ!!」
 次の瞬間、アルファは頬に打撃を受け、吹っ飛んで床へと倒れこむ。
 一瞬遅れてエリックの右拳が、痛みを訴え始めた。


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