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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』
【SF その他小説】

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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜第三部』-7

格納庫から出撃したエリックは、急いで辺りを見回す。
と、すぐそこに、事態の全てがあった。
数体セラムの残骸が転っている。
十機を越えるセラムが一機のワーカーを取り囲み、対ワーカー兵装の歩兵もいる。
取り囲まれているのは。
「アルファ、なのか…?」
 エリックが、思わず呟いた。
そう。そこに居たのは鉛色に鈍く輝く機体、アルファの駆るアーゼンだった。
ナックルガードとライフルを装備している。
そして包囲の輪の中、アーゼンと向き合うセラムが一機。
『………』
 ワーカーの外部スピーカーを使っているのだろう。クリスの声が何か言っている。
アーゼンと向かい合っているのは、クリスの機体だということだろう。
『………とにかく…機体を降りて投降して。……詳しい話はそれからよ。』
 どうやら、アルファに対する投降勧告らしい。
クリスが陣頭に立っているのは、階級がこの基地で一番上だからだろう。
『………』
 クリスの言葉に、アーゼンは反応しない。
緊張した空気が辺りを包む。
エリックは遠巻きに見ているだけだが、緊張感はひしひしと伝わってくる。
アーゼンの腕が、わずかに上がった。
ナックルガードを装着した右腕ではなく、ライフルを持っている左腕の方だ。
突然の銃声。
見ればアーゼンが突き出したナックルシールドに、銃弾が弾かれていた。
どうやらアーゼンの動きに過敏に反応してしまったとみられる一機のセラムが、手に持ったマシンガンのトリガーを引いてしまったようだ。
『…馬鹿…っ!』
 クリスの声が聞こえたと思った瞬間には、既に一機のセラムがコクピットに穴をあけられる。アーゼンが構えたライフルから、陽炎が立ち昇っていた。
クリス機が包囲の輪の外へ出るのに続いて、全てのセラムがアーゼンを狙い撃ちする。
取り囲まれ逃げ場のないその中で、アーゼンは這うように低く、機体を伏せる。
大体ワーカー戦闘ではコクピットかバランサーディスクを狙うのが定石であり、そのため両方が内包されている胴体を狙う。とくに訓練された兵士ほど、狙いを外さないものだ。
したがって銃弾は、従来のワーカーでは考えられない程に低い姿勢のアーゼンの上を通過し、基地の壁やどこかも判らぬ場所へ飛んでいく。さすがに、その銃弾で同士討ちになるようなヘマは、ジュアリアの兵士もしていない。
銃弾をかわしたアーゼンは低い姿勢をそのままに、セラムの一機に肉迫する。
慣れない相手の態勢に、セラムの照準は追いついていない。
慌てて迎撃しようとしたその機体の後ろに素早く回り込むと、その後ろにいたセラムに向かって銃を掃射する。ここまで素早い動きは、新型故の性能なのだろう。
そんなアーゼンに向かって、他のセラム達からの銃撃が襲う。
だが、回り込んだセラムを盾にし、あるいはナックルガードで弾き、アーゼンに銃弾が当たる事は無かった。
そして数秒した頃に広がっていた光景は。
十機を越えるセラムの残骸。対ワーカー兵装をした歩兵も、ほぼ全滅に近い。
エリックは遠巻きに見ているだけだったからこそ無事だったが、恐ろしい程アーゼンは強かった。すっかりエリックは、アーゼンの戦闘にのまれて、見ているしか出来なかった。
しかしそんなアーゼンに、まだ刃向かうものがいた。
クリスが乗っているのであろうセラムだ。最後まで残っているなら間違いない。
「やるしかないか…!」
クリス機と熱戦を繰り広げているアーゼンに、エリックは狙いを定める。
今なら、アーゼンはクリス機の相手で精一杯の筈だ。
狙いすまし、アーゼンがクリス機の銃弾を半身ずらしてかわした所でトリガーを引いた。
完全な十字攻撃だ。伏せたりしてかわそうものなら、クリス機のいい的だ。
なにしろ、クリスはそこら辺のパイロットとは違うのだ。
しかし、たまたまなのかアーゼンが回転した拍子に、エリックの銃弾はナックルシールドに当たって弾かれてしまった。
思わず呆気に取られたエリックを現実に引き戻したのは、クリスのセラムが吹っ飛ぶ音。
どうやらアーゼンは回転した勢いそのままに、ナックルガードでパンチをしたらしい。ガードしたとみられるクリス機の両腕が潰れ、基地の壁に叩きつけられていた。


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