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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』
【SF その他小説】

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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜第三部』-67

第二十五話 《変後暦四二四年二月二二日》

 まっすぐにアーゼン達はベルゼビュールの方へ向かっている。
何しろ、今はベルゼビュールが一機だけ突出している状態なのだ。
「量産…されたのか……?」
 思わず呻く、エリック。
『とりあえず、近くの敵を倒したら俺達も援護に向かうからよ』
『…少しの間耐えろ』
 見れば二機ともに乱戦の真っ只中にある。幸いガゼッソの装甲のおかげで撃破はされていないようだが、さすがにこの状態でベルゼビュールの援護は無理だろう。
H・S部隊も、敵部隊の戦列を突破してまでベルゼビュールの援護には回るまい。
狙撃仕様部隊もS型部隊も、H・S部隊の援護で大忙しだ。
おかげで周りの敵を沈黙させると、ベルゼビュールに向かってくる敵も殆ど居ない。
沈黙した敵ワーカーが障害物になって、ベルゼビュールの隠れる隙間を作ってくれる。
「簡単に言ってくれるな、全く……」
 悪態をつくエリックだが、それで向かってくる敵が居なくなる訳でも無い。
今までは機体性能の差で死なずに済んだようなものだ。さすがに同等の性能を持つアーゼン多数とは、渡り合える気がしない。
「今度こそまずいか……」
『もう一機、急速に接近している敵影発見。まだ遠いが、5分かからずそちらに行くぞ』
 エリックの絶望に輪をかけるように、隊長からの通信が入る。傭兵の指示は隊長が統括するようになったようだ。それはともかく、話の内容は深刻だった。
そんな事を考える間に、アーゼンが射程に入った。銃口を、ベルゼビュールに向けている。全機、武装は右手に銃、左手にナックルシールドだ。さすがに正面から戦って勝ち目は無いので、沈黙しているワーカー数体を集めたバリケードに隠れて銃弾をやり過ごす。大半のアーゼンが立ち止まって、一定の距離を置いた。エリックを逃がさない為のようだ。
高く跳んでバリケードとベルゼビュールの上を越えるものが二機。
頭上を通る間に、ベルゼビュールはマシンガンの銃口を一機に向ける。
アーゼン二機も、中空からベルゼビュールを狙っている。
咄嗟に機体を飛び退かせながら、エリックはベルゼビュールにトリガーを引かせる。
ベルゼビュールの居た場所に穿たれる連続した銃痕。敵の武装もマシンガンのようだ。
アーゼンの一機は、銃弾を腹に喰らって体勢を崩したまま、頭から地面に墜落。
そのまま動かなくなる。元々ワーカーは足まわり以外で着地するようにはできていない。
まずは一機沈黙させたが、着地したもう一機が振り向き様にナックルを振りかざす。
X2との戦闘演習でやったように、ベルゼビュールは腕を振り上げつつ立ち上がり、横っ飛びで崩れていた体勢を立て直した。移動しながらの立ち上がりである。
突っ込んでくるアーゼンの後ろへ、腕の振りで生まれた回転を活かしながら回り込む。
空振りで体勢を崩しているアーゼンの背へマシンガンを向け、引き金を引く。
乳白色の液体を撒き散らしてびくりと痙攣し、動かなくなるアーゼン。
普通のワーカーとは比べ物にならないほど、グロテスクだ。
そんな感想を抱いたエリックの横に、飛び込んでくるアーゼン一機。
既にベルゼビュールを射界に捉えていた。エリックはベルゼビュールを伏せさせると、何も持っていない左手で、飛び込んできたアーゼンの足を掴む。
そしてぐいっと引き倒すと、胸部へとマシンガンを掃射。
沈黙するアーゼンを見届ける暇も無く、バリケードを迂回してきたアーゼン三機がバックモニタに映った。咄嗟にマシンガンを構え、掃射するベルゼビュール。
アーゼンの一機が、片腕を撃ち抜かれて銃を取り落とす。
しかしその直後、ベルゼビュールに他の二機が殴り掛かる。
何とか飛び退いて一機の突撃をかわすものの、銃を持っている方の腕に衝撃が走る。
もう一機のナックルシールドが、ベルゼビュールを捉えていたのだ。
肩口が潰れ、態勢が崩れるベルゼビュール。さすがにもう、かわしきれない。


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