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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』
【SF その他小説】

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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜第三部』-65

第二四話 《変後暦四二四年二月二二日》

 敵陣の真っ只中へと突っ込んで行く、ベルゼビュール。
そのスピードは、他のワーカー…H・Sの駆るレイアーゼと比べてすら圧倒的に速い。
エリックは、敵がまだベルゼビュールに狙いを定めて居ない内が勝負とばかりに、勢いに任せてベルゼビュールを突進させる。
敵ワーカーが押してゆっくり前進してくる超重シールドの列には隙間があり、そこから敵ワーカーが突出していた。ただ、そこからは敵ワーカーが出てくる為、突撃は出来ない。
「うぉぉおおおおおおっっ!!」
 エリックの雄叫びと共に、ベルゼビュールは突出していた一体の敵ワーカー、ペール?へと接触。ペール?はベルゼビュールにマシンガンを向けようとして、しかしベルゼビュールの突進を喰らって態勢を崩される。ベルゼビュールは頑丈さも、折り紙つきである。
「捕らえたっっ!」
 そして左手に持っていたシールドを捨てて、ペール?の腰部に手を当てる。
そのままエリックはペダルを踏み、ペール?は地面にガリガリと擦り付けられながら押されていく。あまりに至近距離なので、ベルゼビュールに銃を向ける事すらできない。
抵抗しても、パワーが違う。ベルゼビュールの性能はアーゼンと比べてすら、遜色無い。
そしてエリックは、ベルゼビュールの性能をこの数日間でかなり掴んでいる。
傭兵という職業柄、支給された兵器ばかり使っていた為、機体の性能を掴むのは得意だ。
「機体性能が違うんだよっ!!」
 ベルゼビュールは、ペール?を押したまま超重シールド付近まで攻め入った。
やっと突進を止めるとペール?から手を離し、素早くペール?から離れる。
直後、ペール?を貫く銃弾の雨。ベルゼビュールを先ほどの突進で巻き上げた砂煙に紛れさせながら、エリックは左手をレバーグローブから抜いて、コンソールパネルをいじる。当然、その間も移動する足は休めない。
ベルゼビュールの腰部に搭載されている高性能ボムを外に排出すると、再び左腕をレバーグローブに潜り込ませ、ベルゼビュールの左手でそれをキャッチして超重シールドの向こうに放り投げた。早業である。…ベルゼビュールにはバランサーリングが無いため、その部分が格納スペースとなっているのだ。
数瞬置いて、ボムは爆発。超重シールドの一つが背面からの衝撃に重い音を立てて倒れ、ベルゼビュールが入り込む隙間が生まれる。
そこからベルゼビュールは、超重シールドの内側に居た敵ワーカーの背後に回りこむ。そして、目前に現れた敵ワーカー部隊に向かってマシンガンを掃射する。至近距離で放たれたマシンガンの銃弾は、数体を沈黙させた。
一瞬たりとも動きを止めず、仕留め切れなかった敵ワーカーが反撃を開始するその前に、エリックは横へと機体を躍らせる。ベルゼビュールと背中合わせになっていた敵ワーカーが味方の銃弾によって蜂の巣になるのを見届けもせず、エリックの左手は再びコンソールパネルを滑った。コマンドを入力している内に、右手でマシンガンのトリガーを引き、反撃してきたワーカー達を仕留める。エリックは今まで培った技術を全て脅威の集中によって引き出し、そしてベルゼビュールの性能も、エリックの考えた動きをそのまま表現してくれる。それはあたかも、クリスが自分を守っているように、エリックには感じられて。
半ば勢いで飛び出してきたエリックだったが、死ぬ気がしなかった。


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