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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』
【SF その他小説】

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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜第三部』-6

第二話 《変後暦四二三年十月十五日》


 朝。
光を感じて目を覚ますエリック。
「朝…か……」
 横ではクリスが、まだ穏やかな寝息を立てていた。
思わず微笑んで、エリックは身を起こす。
クリスまで起こすのはなんとなく気が引けるので、そっとだ。
「ん………おはよう…」
 しかしその甲斐無く、すぐさま起きて一声かけてくるクリス。
「ああ、おはよう。意外と遅起きだな?」
 少しだけばつが悪そうに、エリックが言う。
思えばエリックが先に起きているのは、初めての筈だ。
「…悪かったわね……」
 やや膨れて、クリスは身を起こす。ベッドの手前に居た為、早々とベッドから出た。
そして手早く上着を羽織り、きちんと上までボタンをかける。
クリスはそういう所で意外と几帳面だ。
「そうむくれるなって。」
 苦笑しながら、エリックもベッドから出て上着を取る。
「………………」
 そしてそんなエリックを見て、くすりと微笑むクリス。
「……なんだ?」
 思わずエリックは、訝しがって聞いてみる。
するとクリスは途端に視線を逸らす。そのままそわそわと、髪をいじったりしている。
完全に落ち着きが無い。
「…なんでもないわよ。」
 顔をやや高潮させ、クリスはそっぽを向いてしまう。
『急襲、急襲。敵はワーカー一機、兵員は速やかに第一種防衛配置につけ。』
 と、いきなり警報サイレンが鳴り響く。クリスの顔に緊張が走った。
「……一機…?」
 たった一機で基地に攻め込んでくるワーカーなど、聞いた事が無い。
何か裏があるか、それとも別の要因か。
クリスは考え込むように、宙に視線を漂わせる。
「……どうした?っておい!」
 そしてよびかけるエリックの言葉の途中で、クリスは顔色を変えて走り出してしまった。
「…?」
 訝しがりながらも、エリックもクリスを追って走り出す。
しかし曲がり角を曲がったところで、クリスは人ごみに紛れてしまう。
途方にくれるエリックだったが、さすがにぼうっとしてる暇は無かった。
何処に行けば良いのかは解らないが、とりあえずパイロットスーツを着ている者に続く。
ちなみにエリックが着ているのも、ジュマリアのパイロットスーツである。
「…クリスは…?」
 ワーカー格納庫に辿り着いたエリックは、とりあえずクリスの姿を探す。
…居ない。
「くそ……もう行っちまったか…?」
 焦りながら、手近にあるジュマリアの主力ワーカー・セラムによじ登る。
機体はもう残り少ない。間に合ったエリックは幸運といえるだろう。
コクピットに入り、慣れないながらも簡易的にセットアップし、動かしてみる。
こういうものは、大体誰が乗っても大丈夫なようにできているものだ。
「こ……これは……」
 少し動かしただけでわかる。初めての機体なのに、使いやすい。
挙動も素直だし、馬力もありそうだ。それにエリックがナビアで使っていたペール?より一メートル程も大きいのに、震動も少ない。この分だと、武器の性能も悪くは無いだろう。
外からは、また銃声が聞こえてきた。
「クリスの事だから大丈夫とは思うが…」
 しかし、ひっかかる。ワーカー一機を基地総がかりでまだ鎮圧できていないという事実が、エリックを不安にさせるのだ。
内心の不安を否定しつつ、エリックはセラムを急がせる。


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