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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』
【SF その他小説】

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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜第三部』-52

「……各部隊、迎撃態勢だ」
『了解』
 大将格と思しき恰幅の良い軍人が静かに指示を出す。
そしてスピーカーからは各部隊長の声だろう。返事が聞こえた。
エリック達は見ているだけだが、緊張感は伝わってくる。
そして赤い帯が、更に下方へと進む。焦れるような感覚が、室内を包む。
「……長距離砲、発射」
『了解。撃てぇぇえっっ!』
 軍人の指示。返事と同時に爆音、そして建物全体が振動した。
レイヴァリーは四方を北、南、東、西それぞれの研究棟と壁に囲まれ、中央に高くそびえる中央棟という造りになっている。今エリック達が居るのは中央棟である。
その中央棟のてっぺんに、巨大な超長距離砲は設置されていた。理由は簡単。
高いところに設置した方が、遠くまで弾が届くからである。
技術力の高さから、レイヴァリーの兵器は安全性と整備生を保ちつつ、ナビア軍の2倍以上の射程を誇る。これによる距離のアドバンテージが、レイヴァリーの強みだ。
攻撃させずに遠距離から潰す。これが基本である。
砲弾が、超重シールドを一つ吹き飛ばす。壊れた超重シールドに引っかかり、ナビア軍勢の足並みが乱れる。だが、これしきでは止まらない。
仕掛けてある対ワーカー地雷は、超重シールドに踏まれて爆発。さした効果も見せない。
続く砲撃に多少形を崩しながらも、益々、赤い帯は下方へと向かう。
「迎撃砲の射程範囲内です」
「全迎撃砲、発射開始…中央ラインを分断しろ。長距離砲は目標変更、対空装備をしている後方部隊を狙え」
『了解っ!…狙いは対空仕様のワーカー、よく狙えよぉ!撃ち方始めっ!』
 スピーカーから流れる、爆音。
北壁に設置された長距離砲が、一斉に火を噴いたのだ。映像に、その様が映し出される。
或いは超重シールドに弾かれ、或いは外れながらも、超重シールドの隙間から入り込む砲弾は、容赦なく前衛のワーカーを打ち倒してゆく。
少しづつ規模を減じながらも、赤い帯は速度を落とさずに進撃する。
いや、赤い帯の一部は、後方に残っていた。取り残されているのかもしれない。
「S型ワーカー、リキッド爆撃開始」
『了解』
 部隊長達の声が唱和し、戦力状況図に、新しく青い光点が出現する。
恐らくS型ワーカーの飛行部隊は、壁の内部に待機していたのだろう。
暫くして、映像にも空を行くS型ワーカーの部隊が見えた。
「第二部隊から通信」
 その時、オペレーターから軍人へと声がかかる。
「繋げ」
 同時に、メインモニタ左下へと超長距離砲を備えた部隊からの映像が送られてくる。
『狙いをつけていて発見したんですが……これは…?』
 見れば映像には、超重シールドの影で、何やら作業をしているワーカーが映っている。シールドと掛けられた保護色のシートが邪魔でよく見えないが、後方に残った一部だろう。
「………これは………」
 軍人もそれを見て、暫し考え込む。
その時右下の映像ではS型ワーカーが、上空から何かの液体を散布していた。それを浴びたワーカー達から、煙が立ち昇る。恐らく、強酸の類か何かのようだ。歩兵隊などは一たまりもないだろう。対空仕様ではないワーカーでS型を打ち落とすのは易しい事ではない。先の砲撃でS型に対する手立てを削がれていたナビア軍勢には、堪えるはずだ。赤い帯が、徐々に光点へと変わってゆく。そして左下の映像で、シートが外された。


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