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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』
【SF その他小説】

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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜第三部』-44

第十五話 《変後暦四二四年二月十八日》

 「クリス……生きてたのか!」
 エリックは、クリスを抱き締める。もう、何処にもいかせないとばかりに。
その瞳から、涙が溢れそうになる。
状況の不自然さなど、どうでもいい事なのだ。
「……ぐぁぁあああっ!?」
 が、次の瞬間。視野が回転し、手首に痛みが走る。
エリックは手を逆手に捻られ、引き倒されていた。
「ク、クリス………?」
 なんとか首を捻ってクリスの方を向いて見るが、彼女は無表情にエリックの方を見ているだけだ。その凛とした瞳にはしかし、エリックの知っているあの気丈さは無かった。
「……ヌシ……クリスの知り合いか……?」
 呆然としたように、カゲトラが呟く。
「…クリス…じゃ…ない…??」
 片や、エリックはパニック状態だ。
違う。今では、もはや自分を組み敷いている女性はクリスでは無いとはっきり判る。
しかしその外見上の特徴は、尽くクリスと合致している。
いや……
「…少し、違う…?」
 記憶のクリスより、少し年下のように見えた。
「…X2、離してやるでゴザルよ」
「御意」
 ため息をつきながら言うカゲトラの声に、女性…いや、少女はエリックの上から退いた。
手首をさすりながら、エリックは立ち上がる。
「……どういう事なんです…?」
 クリス、もといクリス似の少女を見、カゲトラに問う。
もはや、彼女はそっくりさんの領域ではない。
「まぁ、混乱するのも無理ないでゴザルな…」
 頭を掻きつつ、カゲトラは言う。
「X2、ご苦労。下がって良いでゴザル」
「御意…」
 カゲトラの支持に従って素早く去って行くクリス?を、呆然と眺めるエリック。
「…ヌシにこの部屋が割り当てられたのも、運命やも知れぬでゴザルな……」
 すぐ傍にある扉に目をやり、感慨深げにカゲトラは呟く。
相変わらず、エリックには何が何やら判らない。
「着いてくるでゴザルよ」
 言ってそのまま扉の中へと入っていくカゲトラ。
部屋の中は真っ暗だった。エリックが彼に続いて部屋に入った瞬間。
ぱっと、電灯が灯った。明かりに照らし出されたのは、整頓された部屋。
机と、ベッドが一つずつ。壁には何かの設計図らしきものが貼ってある。
なんとなく、覚えがあるような、そんな雰囲気が漂っている。
「……ここは…?」
 エリックは、先に入っていたカゲトラに訊ねた。何となく、答えは予測できた。
「……クリスの使っていた、部屋でゴザル」
「やっぱり………」
 納得したように、頷く。そして、部屋の空気を吸い込んでみる。
何となく、懐かしい。そして、切ない。


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