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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』
【SF その他小説】

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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜第三部』-155

 第五八話 《変後暦四二四年三月八日》


『お疲れさま、付近の抵抗勢力は粗方片付いたようだね。ゲートを開こう』
 ベルゼビュールのコクピットに、ナインの声が響く。
「……あぁ」
 モニタに映った爆破任務用の特殊仕様ペールを見遣って、エリックは吐いた息に紛れさせて返事をする。ベルゼビュールの足元に転がる対建築仕様ペールのコクピットには幾つかの風穴が空いており、最早ピクリとも動く様子は無かった。
 少し視線を移せば、これまた穴を空けられた装甲車が、半ばひしゃげて横転している。
周りにバラバラと、凄惨な状態の死体が転がっている。
 どれも、エリックがやったものだ。
 ベルゼビュールはペールのコクピットを至近距離から打ち抜き、装甲車を蹴倒して。脱出する施設制圧用の歩兵に銃弾を浴びせかけた。
 戦闘とも言えない虐殺の跡から目を逸らし。エリックは変電施設のワーカー用の入口へとベルゼビュールの足を向ける。
エリックを迎え入れるように、軍事防衛も視野に入れた重厚な搬入扉が開く。開かれた入り口から、西日が変電所内に飛び込んでいく。
屋内に入ると、広がる駐車場から奥へ続くワーカー用通路が、薄暗くベルゼビュールを出迎えた。駐車場にエリック達の乗っていたトレーラーが止まっている。
駐車場には数機のペールが乗降姿勢のまま至る所に銃痕を刻まれて擱座している。パイロットが乗り込むのを防止するために、トレーラーの機銃で破壊したのだろう。物言わぬワーカーの他、駐車場には職員のものと思しき自動車が停まっているだけだ。
ナインはやはり中枢部に居るのだろうか。
 エリックが考えていると、ベルゼビュールの背後で扉が閉まり始めた。
『所内にナノマシン粉末を持ち込まれても困るから、ベルゼビュールを洗浄するよ』
「……」
 どの口がほざくかと言う言葉は胸の内に。もはやナインの言動に一々抗議してもしかたないだろうとエリックはため息をついた。その間に、天井とカベからスプリンクラーのように水が噴射され、ベルゼビュールの装甲を洗う。
 こうして洗浄を受ける事で自分の罪も流されやしないだろうかと思ったエリックだが、そんな思考自体が酷く身勝手なものだと思い直し、頭を振る。
この先に待つクリスとの再会。その為に、全て解ってやった行動だ。今更になって罪を消したいだの許されたいだのは通らないだろう。
『ひとまずこれでナノマシン粉末は飛散しないだろうから、降りても大丈夫。管理室で待ってるよ。場所は案内板に描いてあるだろう?』
 エリックの内心など知りもしないナインの指示を受けて、エリックはベルゼビュールをワーカー用スペースに停める。コクピットハッチを開くと、閉ざされていたコクピット内部に少し乾いた外気が入り込む。戦闘をしていた時間は半日もない筈だったが、随分長くコクピットに篭っていたような感覚にエリックはため息を吐いた。
 しかしまだ落ち着くわけにはいかない。クリスの事をナインに確かめなければならないのだ。コクピットを出て先ほどの洗浄で湿った地面に降りると、エリックは管理室を目指して歩き始めた。


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