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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』
【SF その他小説】

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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜第三部』-105

「……ふぅ…」
 思わず脱力したくなるのを堪え、周りに他の敵がいないかを確認するエリック。沈黙した巨大ロボットを挟んだ向こうのトレーラーではまだ戦闘が継続しているらしく、激しい銃声がベルゼビュールの外部マイクに届く。そしてその反対側…エリックの居る方には、敵影はない。此処はアルファ達の援護に回るべきだろう。
「…こっちにはもう、敵は居ないようだ」
エリックは呼びかけながら、ベルゼビュールのつま先から金属の爪を出して、倒れた巨大ロボットを乗り越えさせる。こうも巨大だと、倒れていても邪魔になる。
『確認した』
『ですが、そちらからは脱出できそうにありませんね…』
 無人機の相手で手一杯のグリッドに続いて、トレーラーの運転席からアリシア。確かに、巨大ロボットに塞がれた道をトレーラーが通る事は難しい。脇に寄せるにしてもベルゼビュール一機では難しいし、解体するにも時間がかかりすぎるだろう。
「結局、そっちをどうにかするしかないって事か」
 巨大ロボットの上から飛び降りてトレーラーの許へ向かうベルゼビュールのコクピットで、エリックは憂鬱そうに呟いてイオンブースターのスイッチを待機状態にする。発動させっぱなしでは機体の消費電力が凄まじいし、Gによる疲労が激しいのだ。
『このままじゃジリ貧だぜ……ちくしょうっ』
 アレクがまた一機無人機を沈黙させ、毒づく。やっとトレーラーの傍に着いたエリックが見てみれば、もはやバフォールが見えなくなるほど無人機の残骸が重なり、もう一方の道も同じ状況だ。それを乗り越えて、尚も現れ続ける新手。その様は此処に残骸の山でも築きたいのかいう程で、益々一方向への突破を困難にしている。
唯一の救いは、此処が高層ビル群であるが故に建物を越えた攻撃を受ける事が無いというところだろうか。唯の気休めに過ぎないが。
『…元々俺達は大規模戦闘要員じゃないからな…』
 グリッドは呟き、エリオットは除いて、と付け加えた。エリックは、今でも獅子奮迅の活躍をしているのであろう。バフォールが居る方の道からは、残骸を乗り越えてくる無人機が居ない。だがそれも、現状の打破には繋がらないだろう。ベルゼビュールがもう一方の道に突っ込んで無人機を防いでも良いのだが、それでも用心の為、トレーラーに一機はつかなければならないだろうし、アーゼン一機ではやはり、巨大ロボットをどかせない。結論として、状況は絶望的としか言えないようだ。
『…早々と逃げるべきだった……』
 苦りきった声で、グリッドが呟くのが聞こえた。恐らく、グリッドを偵察に出している時間を逃亡に使えば、此処まで事態は悪化しなかったという事だろう。中心部に入ってからの戦闘という事で、慎重になりすぎたらしい。
「今は先ず、此処をどう切り抜けるかだ」
 言うエリック自身も、策などないのだが。
『応急処置が完了したようです。側面開きます』
アリシアの声が聞こえたのは、そんな時だった。続いて、トレーラーの側面部が開く。バックモニタを確認すると、中から義足のアーゼンが姿を現す所だ。降車すると同時にM型ならではの軽やかさでトレーラーの上に飛び乗ると、両手に持ったマシンガンを無人機達の方に向ける。その動きを見る限り、義足の補強でもしていたのだろう。
『よし、トレーラーを頼む。アレクは俺と共にデカいのをどかすぞ』
『了解っ』
 エリックと同じ事を考えていたのだろう。グリッドは指示を出すと、アレク機を連れて巨大ロボットの居る方向へと走っていく。これでなんとかなると思ったエリックだったが、義足のアーゼンは突如としてグリッド達の向かう方に銃を向けた。
『……新手かよ……!』
 アレクの声に耳を塞ぎたくなる衝動を堪え、エリックは目前の敵の排除を続行する。
『駄目だ、どんどん増えてる…!』
 そこへ、アルファのバフォールが戻ってくる…勝利の凱旋という訳ではないらしく、追ってきた無人機の迎撃を始めている。
「どうするんだ…!?」
 もはや万策つきた。エリックはそう思う他無かった。


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