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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』
【SF その他小説】

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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜第二部』-1

プロローグ・大まかなあらすじ、そして…帰還


“滅びの風”と呼ばれる災害によって人類の大半が死滅した世界。
人々はその日から暦を変後暦とした。
そしてその中で作業をする為に人類は『ワーカー』という七メートル程の作業用二足歩行ロボットを開発し、再び復興を遂げる。
その中で再び国が出来、各国は小競り合いを始める。
そして滅びの風が止んだ時。ワーカーは復興の手段から戦争の道具へと変わった。
幾度もの争いの末、超大国『ゼニオン』の圧力により世界は安定するが、それすらも一時のものでしかなかった。
変後暦四二〇年、ゼニオンの崩壊により圧力が無くなった西の大国『ナビア』は、自国から独立して誕生した『ジュマリア』を制圧しようと戦争を開始する。
しかしジュマリアの誇る高い技術力、そして『雷神』と呼ばれる超人的なパイロットの活躍により、ナビアは劣勢に立たされる。
四二一年ナビア軍勢は雷神を撃破。しかし雷神の後を継ぐ『風神』により、戦況をもりかえすには至らなかった。(士気の低下を防ぐために、雷神撃破の事実はナビア内には隠蔽)
とは言ってもジュマリアにもそこまでの余力は無く、戦争は膠着状態に。

そして四二三年。
平凡な一兵士であるエリック・マーディアスは、初出撃の日に、風神と遭遇する。
しかも不測の事態によって、二人の機体は地下の遺跡都市へと落ちてしまう。
そこでエリックは、風神である女兵士、クリスと協力して脱出する事となる。
幾多の局面で圧倒的な能力を発揮するクリスに助けられ、自分の無力さを憂いつつも、エリックは彼女に惹かれていく。
またクリスも、死んだと思われるかつての幼馴染であり今なおも慕う思い人・エルに似ているエリックに興味をひかれ、二人は敵同士でありながら、急速に惹かれ合う。
やがて脱出に成功するエリックとクリス。
その時エリックはクリスへの思いを吐露し、クリスも条件付きでそれを受諾する。
クリスが出した条件、それは戦争が終わった時、彼女の思い人であるエル……雷神を超えるというものであった……

 無事に簡易基地へと帰還して小隊長に帰還報告を終えたエリックは、一目散に友人二人を探した。
部屋を当たってみても、二人は見当たらない。食堂にも、トレーニングルームにも。
不安がエリックの胸を締め上げ、いつしか彼の足は医務室を目指して駆け出していた。
と、医務室へ向かう曲がり角を曲がった瞬間。
「うわっっ!?」「……!!」
反対側から歩いて来ていた誰かに、勢い良くぶつかってしまった。
「ってて…すまない、急いでたもんで……ってミーシャ!?」
 そう。なんとエリックがぶつかったのはミーシャだった。
「……エリック………?生きてたの?」
 若干驚きの色を浮かべつつ、ミーシャが聞き返す。
普段感情を面に出さないミーシャが、少しでも驚きを顔に出したという事は、相当驚いたのだろう。そして、何処と無く彼女の表情が和らいだ。
「…ミーシャも無事だったか!良かった……それで、カイルは何処だ?」
 ミーシャが無事だった喜びも手伝って、意気揚々とエリックは聞く。
しかしその言葉を聞いた途端、ミーシャの顔が僅かに曇る。
「カイルは、ここには居ないわ。」
 一瞬にして、浮かれた気分が醒めた。
「まさか………」
しかし継ごうとしたエリックの言葉を遮り、ミーシャが口を挟む。
「違うわよ。カイル、戦闘での怪我は全く無かったわ。」
「なんだ………無事なのか…」
 一気に脱力するエリックだったが、そこで疑問が浮かぶ。
「……じゃあ、なんで此処には居ないんだ?」
 訊ねるエリックに、ミーシャは暫し沈黙する。だがやがて、口を開いた。
「異動という事になっているわ。行き先は、リクリス研究所。」
「リクリス研究所…って事は……!噂に聞くアレ、か…?」
 ミーシャは、多分、と言うように頷く。
アレと云うのは、軍で噂されている人体実験の事だ。
研究者が突然来訪し、兵士を連れて行く。それは上層部の承認を受けているらしく、逆らうことは許されない。そして連れて行かれた兵士は、二度と戻って来ることは無い……
というのが、噂の内容だ。エリックも、単なる怪談の類だと思っていた。
しかしカイルが消えた今、それは現実のものとしてエリックに関係している。
「……くそ、どうにもならないのかよ……!」
 思わず口をついたエリックの言葉に、ミーシャが黙って首を横に振る。
もはや単なる一兵卒に、どうにかできる問題では無いのだ。
「ちくしょう……!なんで俺は…!!」
 こんなに無力なのか。という言葉を飲み込み、拳で壁を殴る。
力が、欲しかった。クリスにも、雷神にも負けないような力が。


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