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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』
【SF その他小説】

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『兵士の記録〜エリック・マーディアス〜』-14

第七話・トビラのムコウ
《変後暦四二三年四月?日》


 扉の向こうは、全く荒れていなかった。
整然としていて、ちり一つ無いようだ。
そして細い廊下が、二人の前に延々と続いている。
「ここは……?」
「…知らないけど…何か重要な場所に続いてるみたいね……」
 ライトで闇を照らしながら歩くクリスが、後ろに続くエリックに答える。
「…危険は無いと思うけど、一応油断しないでね。」
「ああ、わかってる。」
「それにしても、やたらと長い廊下ね……」
 そう。その廊下は長かった。
二十分後。
「…このまま歩いている内に、戦争終わるんじゃないか……?」
ひたすらに続く廊下に時間感覚を麻痺させられ、エリックはげんなりしながら言った。
「そうね………………?」
適当に相槌を打ったクリスの言葉が、途中で止まる。
二人の目の前に、空間が開けたのだ。
「ここは……?」
 本日二回目の、エリックの質問。
「さしづめ、此処の制御施設ってとこじゃないかしら。…脱出する手段は無さそうね。」
 答えながらクリスが照らした空間は、様々なモニターとコントロールパネルが並ぶ巨大な部屋だった。ここもまた整然としていて、脱出に使えそうなものは無い。
当然、行き止まりである。
「はぁ………どうするんだよ……」
「うるさいわね。少し調べてみるから、そう情け無い声出さないでよ。」
思わずため息をついたエリックに、クリスが冷たく言う。
「調べるったって……」
 ここのコンピューターは動きそうに無いし、それ以外この部屋には何もない。
「今考えてるわよ。」
 苛立ったように言って、クリスはそのまま考え込んでしまう。
なにしろ外にろくなものが望めない以上、此処が最後の望みだったのだ。
考え込んでしまったクリスにそれ以上かける言葉も無く、エリックは所在なさげにぶらつく。と、ふと思い立ったようにライトを固定して室内灯にしてみる。
全体とはいかないまでも、周りは明るく照らされた。
明るく照らされた部屋を見ても、やはり何も無さそうだ。
そしてそんな事をやってみても、クリスは相変わらず考え込んだままだ。
急に不安になってくる。クリスが居た事で感じなかった不安感が、今急に襲ってきた。
クリスが悩んでいる様子が、エリックに自分が今かなりの危機的状況に居る事を、思い出させたのだ。
「……なんともならないのか……」
 ぽつりと呟いたエリックの言葉に、クリスが思い切り反応する。
「だから今考えてるって言ってるでしょ!?どうせあんた一人じゃ何も出来ないんだから、ごちゃごちゃ言わないで!!」
 言ってからはっとした表情をしたくリスだったが、時既に遅し。
怒鳴るクリスの言葉で、エリックの不安は怒りに変わってしまっていた。


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