投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

スプーン・ポジション
【女性向け 官能小説】

スプーン・ポジションの最初へ スプーン・ポジション 12 スプーン・ポジション 14 スプーン・ポジションの最後へ

隣のオンナ-3



「―――んで、どうしたんだよ。その女」


「………いや……このままじゃヤバイと思って、俺がそこで弁当持って入ってたんで、そこまでっスけど……」


「………は?弁当?……なんだよお前、よくそのタイミングで入るな!?」


「……え?……そ……そうスか……?」


「そうだよっ!せっかくイイとこだったのになんで邪魔すんだよ全くよー」





「…………店長…………それ……誰目線で言ってんスか?」



「バーロー!日本中の成人男子代表目線に決まってんだろーが!……お前そこまで覗いてたくせに、なんで最後まで見てこねぇんだよ!」


店長という立場も忘れて、あからさまに残念そうな顔をする寺島。


「いや……んなコト言われても……」


「たった今まで出歯亀だったのに、急に一人だけ中途半端にカッコつけてよー。昔っから、『据え膳食わぬはなんたらかんたら』とか言うだろうがよー!」


「……いや……その例えは何か違うと思いますけど……」


「ふーん………なーんだよ。つまんねぇ話だな」


寺島は白けたように大袈裟に呆れて見せると、再び車のほうに向かって歩き出した。



中途半端……か……。



そうだな――――。



確かに馬鹿げてるかもしれない。
俺が女を助けるなんて。


誰よりも大切にしなければいけなかった女を、何年もさんざん苦しめて泣かしてきたくせに―――。


自嘲気味な笑いがこみあげたところで、寺島の携帯電話が鳴った。






「―――はいっ、弁当のテラシマ!―――はいっ。チキンカツ弁当と焼鳥弁当。毎度ありがとうございます!場所は?―――はぁはぁ、わっかりやしたぁ。すぐお持ちします!」


携帯電話を白衣のポケットに突っ込みながら、寺島が職人の顔に戻る。


「おっしゃ、木村ぁ!仕事だ仕事!」


「――ハイ」


注文が入って仕事を始める時の寺島はいつも本当に楽しそうで、俺は少しだけ羨ましくなる。


なんだかんだ言いながら、この人はオン・オフのメリハリの利いたいい店長なんだろうなと思う。


「あ、それから―――」


車のドアを開けながら寺島が振り返った。


「……ハイ?」


「今回の出前は―――俺が行く!」


仕事モードのまま大真面目にキメた顔に耐えきれず、俺は思いっきり吹き出してしまった。



―――――――――――――――



スプーン・ポジションの最初へ スプーン・ポジション 12 スプーン・ポジション 14 スプーン・ポジションの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前