Crusade Ⅲ-4
黒い尼僧服を纏った少女は、授けられた聖命の重さに打ち震えることもなく、ただ静かにそう答えた。対する緋色の法衣の男は、その身分に相応しい威厳で返答する。
「汝に主の御加護があらんことを」
ロタリオ・ディ・セニ枢機卿。それが彼の法皇領での役職であり、そして権力であった。法皇をトップとして構成される法皇領の各省各局を動かす重臣レベルの僧侶たち。一般の僧侶が着る黒い祭服ではなく、彼らのみ袖を通す事を許された緋色の法衣をだらしなく着崩すこの男こそ、その枢機卿の一人であり、法皇庁が隠し持つ神罰の執行機関、通称BESTOWERS機関」の局長であった。
ロタリオの言葉に軽く頷いたセシリーは、次にふとロタリオが瞬きをした瞬間に、幻のように消え去っていた。