投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

「遠い隔たりと信じられない近さ」
【ファンタジー 恋愛小説】

「遠い隔たりと信じられない近さ」の最初へ 「遠い隔たりと信じられない近さ」 26 「遠い隔たりと信じられない近さ」 28 「遠い隔たりと信じられない近さ」の最後へ

「遠い隔たりと信じられない近さ」-27

『わたしね、先生のことが好きみたい』

『やっと言った』

『…本当は、送ってもらってる時もドキドキしてるの』

『先生に、そう言えばいいよ』

『でも、先生…他に好きな人いるみたい』

『えっ?』

『それに、わたしには受験があるから』


 アイコは、想いを胸にしまった。


『わたしも言ったんだから、アキくんも教えてよ』

『えっ、いないよ』

『わたしのことが分かるくらいだから、いるでしょ?教えてよ』

『本当にいないよ』

『看護婦の矢野さんは?手紙によく出てくるけど』

『矢野さんは仲良しだけど、なんとも思ってないよ』

『そうなの?』

『うん。でも、また新しい夢ができたよ。病気を治して学校に行けるようになったら、好きな子をつくるよ』

『頑張ってね』


 今まで、心の中に封じ込めていた様々な気持ち。
 それを聞いてくれる、意見をくれる友だちと出逢ったことは、2人の感情に豊かさをもたらした。

 それは、晶にとってもアイコにとっても、良い結果を生んでいた。



 そんなある日。

「こんにちは!」

 晶のもとに、矢野がやって来た。

「晶くん。明日、お母さん来るのよね?」
「うん、そのはずだけど」
「その時、先生から大事なお話しがあるから、一緒に聞いてくれる?」

 今まで、治療に関する見解は、母親だけに知らせていた。
 なのに今回に限っては、晶にも聞かせるという。

 晶の中に、不安が一気に広がった。

「それって、悪い話なの?」
「わたしからは、教えられないのよ」
「そんなこと言わずに、お願い」

 すがるような眼に、矢野は躊躇いを隠さない。
 しばらく考えた後、「じゃあ、ヒントだけね」と断ってから話し出した。

「良いお話しよ。晶くんにとって」

 矢野は、それだけ言って病室を出ていってしまった。

「良いお話し…?」

 残された晶は、1人考えを巡らせるが、結局分からなかった。




「遠い隔たりと信じられない近さ」の最初へ 「遠い隔たりと信じられない近さ」 26 「遠い隔たりと信じられない近さ」 28 「遠い隔たりと信じられない近さ」の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前