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忘れ得ぬ人(改稿)
【同性愛♀ 官能小説】

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側聞/早苗とその娘・茜は-14

「茜、入っていい」
「ママ、どうしたの? パパは?」
「何だか疲れたって言って寝ちゃった」
「一緒に寝てあげなくていいの? 茜、今勉強中なのよ、と言って茜はマンガを机の下に隠す」
「さっきの続きを話してスッキリしちゃおうって思ったの」
「大丈夫なの? まあ、泣いたら涙を拭いてあげるからね」
「タオル持ってきた」
「タオルがいるほど、そんなに泣ける話なの?」
「うん・・・」
「それで?」
「それでね・・・身じろぎもせずに放心状態だった彩ちゃんがね、黙って座っているママに気付いたのは5分以上も経ってからよ」
「ママも大したものね。黙って彩乃先生を観察していたの?」
「バカおっしゃい観察だなんて。彩ちゃんの気持ちを想いながら泣いていたのよ・・・」
「ふーーー」
「彩ちゃん、ママに気が付いた途端、昼間なのに幽霊でも見たように驚いちゃって飛び上がったの。その拍子にドレッサーの角に思いっきり膝ぶつけて<イタァァ>って言って涙流したの」
「その涙かァ」
「バカおっしゃい。だけど、それが切っ掛けとなって二人で涙流しながら笑ってしまったの。一時笑った後、突然彩ちゃんが大声で泣き出したの。笑ったことで気が弛んだのねキット。ホント、なんでも切っ掛けなのね。ママに抱きついて大泣きした後、ママの胸の中でストンと眠ってしまったのよ」
「へえええええ」
「ホント。ストンって感じ・・・何日も何日も眠っていなかったのね。だって、ベッドが乱れていないんだもの。ドレッサーの前で、見たときのままの姿で固まってしまってたんじゃないかと思えたわ。どれだけ眠れない夜だったかママには分かった。彩ちゃんの身体が汗くさかったのを覚えてる。多分ママの胸は、茜にあげるオッパイが張っていたし、その匂いがしたのよ。だから、安心しちゃったのよ・・・」
「・・・・・・」
「ママね、足は痺れるし、座っている態勢で彩ちゃんの体重を受けていたので疲れちゃって・・・彩ちゃんを胸に抱いたまま、起こさないように横になったの。そうしたら・・・」
「もう一枚タオル持ってこようか?」
「そうしたらね、<お姉ちゃん、お姉ちゃん>って言って、ママにキスしてきたの・・・」
「えええええ・・・キス・・・スゴイ、ママにキス・・・」
「ホント、スゴーイキスだった・・・」
「ママ・・・もっと詳しく・・・」
「バカ・・・そりゃ、ママも・・・言いにくいなあ・・・」
「娘だと思わない。茜牧師に懺悔しているんですぞ今は」
「お返ししたわよそりゃあ・・・彩ちゃんの舌を思い切り吸ってあげた・・・」
「えええええ・・・・えええええ・・・」
「ママにキスしたんじゃないのよ。お姉ちゃんになのよ。ママね、彩ちゃんが夢見てる、奈津子先輩にならなきゃって思ったの。キスをしてあげたら、胸の上で掴んでいた手を離してママにしがみついてきたの・・・強く強く抱きしめてあげた・・・彩ちゃんの目から涙がどんどんでてきて、ママも泣きながら、彩ちゃんの涙を吸って上げたわ。そしたら、またストンと力がなくなって、こんどは、可愛い唇から大きな鼾をかきながら眠るの。ママね、夢でもいい、奈津子先輩に甘えなさい・・・思いっきり甘えなさいって囁きながら、茜をあやすように、彩ちゃんを長い間トントンしてあげて・・・汗くさい彩ちゃんを抱きながら、奈津子先輩が、彩ちゃんが可愛くてしょうがなかった気持ちが痛いほど分かったの。彩ちゃんが奈津子先輩をどれだけ愛していたかもね。ママね、ふっと、茜もパパも忘れて、彩ちゃんの汗が甘い香りに思えてきて酔っていたみたい。それまで思ってもいなかったことなのにね。これが同性愛の甘美さなのかなって思っていたわ。茜もパパも愛してるわよ。だけど、一瞬家族を忘れて腕の中の彩ちゃんだけがいたの。この甘美さに負けると、その世界に入ってしまうなあ・・・って、ぼんやり思いながらママの腕の中で安心しきっている彩ちゃんの寝顔を見ていると、切なくて、可愛くて・・・」
「ママ・・・・・帰ってきて」


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