Rasputin X-1
女の嬌声が響く。
視界に入る物全てに、一般民衆が目もくらむほどの金を費やされて構築された部屋。壁紙から、化粧机、ドアノブに至るまでだ。だがその部屋の中心に据えられたベッドでは、二人の男女が極めて野性的な行動に腐心している
「ああ……もっと……ッア!」
ベッドで身を捩らせているのは、一人の若い娘だ。仰向けに寝転がるその娘の太ももの間に顔を埋める男は、蛇のように長い舌を用いて娘の密壺を嘗め回す。
男の舌は娘の秘部を焦らすように這いずり、そして時折強くそれを嬲ってやる。
「ハアッハアッ……ンッ……」
娘の陶器のように美しく白い肌は、汗をしっとりと浮かべている。空いた男の両腕はその汗を愉しむように掬い取りながら、控えめな娘の乳房を弄ぶ。
乳首には、最小限の刺激を。触れるか触れないかの刺激を与え、娘はもどかしい感触に体を捩る。舌も、時折強くそれを嬲りながらも、決定的な快楽を与えはしない。
娘は不満げな瞳を男に向ける。だが男はそれを知って知らずか、娘にふとほほえんでやりながらも、その責め方は変えない。娘は男と視線が合うと、急いで目を反らす。
娘が男に惚れているのは明白だった。まだ微弱な快楽とはいえ、自らがそれに溺れている顔を男に見られたくはないのだ。
翡翠色の目を快楽に染まらせ、顔は上気している。だが、娘が快楽の新たな段階に踏みいろうとすると、男はすっと舌と手を緩めてしまうのだ。
「ああ……ああっ……」
娘はさらに身を捩り、男の指を、舌を求めようとする。だが男がそれを許さず、娘を柔らかくいたぶっていた。
だが遂に、娘が男にその責めの催促をしようと顔を上げようとした。快楽に溺れているのをこの男に知られるのを恥じる乙女心より、己の内に潜む肉欲が彼女の中で勝ったのだ。娘が躊躇しながらも、その言葉を口にしようとしたときだ。
男の舌が、娘のクリトリスを擦った。
「んあああ!」
娘は突然の快楽に、体を弓なりに反らす。悪魔のような妙技だ。娘の心を自ら淫らに開かせ、そしてそれを認めた瞬間に強く責める。男は、女を完全に掌中に収めていた。
快楽の奔流が女を襲う。舌や指は今や男の意志のまま娘を弄んでいた。爪で軽く乳首を挟めば、微弱な痛みとそれを上回る快楽が娘を襲い、秘部を嘗め回す舌が突如その内部に進入すれば娘は悦びの声を上げる。
「いや……だめえ……」
その言葉を吐く割には、娘の体は男の責めに順応し、そしてその頬はさらなる快楽を期待して上気していた。男は娘の秘部に顔を埋めながらも、上目遣いでその表情を確認する。
娘の方は、彼女に奉仕を続ける男のその瞳に、魅入られたように恍惚とした視線を向ける。その目は、今は優しげな光をたたえているが、だが同時に悪意、もしくは邪念のようなものが籠もっている。娘は、その邪悪な部分にまでその心を捕らわれているのだ。
娘の状態を見て満足したのか、男は更に娘を責め立てた。舌は一個の生物のように娘を嬲る。娘の入り口付近をなぞりながら、時折クリトリスに刺激を与えてやるのだ。そしてそのたびに、娘は小さく悲鳴を漏らした。男はその様子を見て、自らが完全に娘の快楽をコントロールできていると把握する。だからか、こんなことを言い出した。
「……姫様、私がいいと言うまでイクことは許しませんよ? 勝手にイッたら……わかってますね?」
その言葉に、娘は一瞬ゾッとしたような顔を浮かべたが、それは半ば演技じみていた。男が含みを持たせて語らなかった部分を、明らかに期待している。
そして「姫」と呼ばれた少女、アナスタシア・アラゴン・ボルジアは、その高貴な口から抗議をしようと口を開きかけたが、それは嬌声へと変換される。男の舌がより激しい責めに変わったのだ。
「ンアアッ! そん……なっ……ズルいですわ……アアッ……そんなの……すぐに……イッちゃ……」
女がやっとはき出した抗議は、だが男に届かぬ。今やその目を完全に嗜虐の悦びに歪めた男は、娘を容赦なく責め立てた。それでいて、なんとか達するのを耐えようとする娘を観察し、その様を愉しんでいた。
「ハッ……ハッ……んっ……ンアアアアアッ! イヤ! アアアアッ!」
娘の体ががくがくと痙攣する。男が、これまでの責めでもっとも強くクリトリスを擦ったのだ。快楽に蕩けた体には、乱暴ともとれるその責めも悦びへと変わってしまう。
「待って……待っ……ンッ……らめぇ……あ……あ……アアアアアアアアア!」
ひときわ高い声を上げると、娘は達した。無様にもその高貴な身分に相応しくない声を上げて。
まだ責めれば娘から快楽を引きずり出すことができただろうが、男は責めをやめる。そして盛大にイったアナスタシアを見下ろすようにベッドにたつと、殊更馬鹿にしたような口調で語りかける。
「おや、もうイッてしまわれたのですか、姫様? そんなに簡単に達するなんて、淫乱なんですね」
「ち……ちが……」
弱々しい抗議の声は、新たにあふれ出た娘の愛液を見れば、滑稽なものだ。男はそれに気づき、しゃがみこんでアナスタシアの秘部から愛液を掬い取る。
「ほら、姫様の嫌らしい蜜ですよ。私ごときに罵られて感じる淫乱な姫のね」
娘は言い訳もできず、男から目を反らした。男はそんな娘を鼻で笑うと、話を続けた。