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BESTOWERS
【ファンタジー 官能小説】

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Rasputin W-1

 武装した男に囲まれる形で、三人は城への道筋を進む。その道さえもやはり人っ子一人おらず、街はいまや兵士と尼僧の貸し切り状態であった。

「……一体街の人間はどこにいったのですか?」

 控えめな態度が功を奏したのだろうか。この中でもっとも階級が高いと見える先ほどの男へ投げかけたベラの質問に、男が答えた。

「今は無期限の外出禁止令の布告中だ。陛下が魔族に暗殺されたとなれば、城下の治安を守るために仕方のない措置だ」

「まあ、暗殺? 魔族が?」

 ベラは、自然な反応で驚いてみせる。その反応は男に届いたとは言い難かった。それ以上は、口をつぐんで話そうとしないのだ。

 ベラが男との円滑なコミュニケーションを図ろうとしている様を後ろで呑気に眺めながら、残ったエイダとエステルは小声で話し合う。

「町に入っていきなりこれとは、ついてねーなー。赴任初日は、まず酒屋に直行、じゃねーの?」

「それは流石に聖務を舐めすぎですよ不良僧侶」

 口をほとんど開かず、そして視線を動かさず、という高度な内緒話をする割に、話の内容は至極くだらないものだった。周囲を武装した屈強な男に囲まれているにしては、緊張感の無い娘達であった。

「でも、手間は省けるかもな」

「……ええ、城に行けば、姫と話せますし、ラスプーチンなる人物に会える可能性もある」

「あー、魔術師だっけ? よっくそんな奴が姫君に近づけたね。ラテル=アノなら即打ち首獄門よ?」

 二人は、最近ミドルードを騒がせていた謎の人物について言及する。

 ラスプーチン。ボルジア領より西、海峡を越えた先のリモナフ領よりやってきたと言われる男で、一体どのような術を使ったのか、卑しい身分でありながらボルジアの姫君に取り入り、ミドルード城内で影響力を持ち始めたという人物である。その噂はボルジア領を超えて遙か法皇領や帝都まで広がっていた。

「さあ……そこまでは。ただ、今回の事件にも絡んでいるかもしれない人物ですから、それを見極められるかもしれません」

 エステルとエイダの会話は、周囲の兵士には到底聞こえぬほどの大きさではあったが、ミドルード城が近づくにつれ狭くなる道に対応して兵士が彼女らを囲む輪を狭めると、ぱたりと二人の会話は止まった。

 それきり城門をくぐるまで、ベラと無愛想な男の世間話が続くばかりであった。


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