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BESTOWERS
【ファンタジー 官能小説】

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Rasputin U-1

「あんたら、本当に行くのかい? 気をつけてな」

 小太りの男が人の良さそうな顔を物憂げにして、そう忠告した。その言葉の先にいたのは、3人の尼僧だった。ラテル=アノの法皇庁から派遣されてきた補充要因の尼僧とのことだったが、禁欲的で地味な尼僧服の上からでも、それぞれの特徴が滲み出ているのが不思議だった。

「陛下が魔族に暗殺されて、今城下は混乱してるらしい。盗賊どもも、その騒ぎを聞きつけてそこら中で暴れ始めるって噂だあ。大人しく家の中に籠もってるのが一番だと思うがね」

 その中の一人、柔和な笑みを浮かべる最年長と見える尼僧--といっても、男からしたらそれは娘と言って良い年齢に思えた--が答える。

「ええ、聖務ですので。ご心配ありがとう御座います。貴方に神のご加護があらんことを」

 そう言って男のために祈りを捧げる。男はまだ何か言いたそうな顔をしていたが、しばしの逡巡の後、場所を引き返していった。そんな馬車にいつまでも視線を送る女に、声をかける人間がいた。

「で、これからどうするのさ」

 殊勝な尼僧を演じるのをやめ、片手を腰に当て、片足に重心をかけだらしなく問う女は、燃えるような赤髪の女だった。通常の尼僧なら許されないほどの長髪を指で弄びながら、特徴的な吊り目の中で瞳を燃やしている。

「そうね。ひとまず、赴任先の教会に行きましょうか。城下町にあるはずだけど、騒ぎは起こさないようにね、エイダ?」

 エイダと呼ばれた先ほどの女は、鼻を鳴らしてその答えとした。尼僧服を窮屈そうにしながら、歩き出す。

「じゃ、さっさと行きましょ。ぱっぱと今回も片付けちゃいますか」

 そこまで言うと、すたすたと先を急ぐ。幸い、彼女らの視線の先には都市を囲む防壁と、都市と外界を繋ぐ門が見えていた。エイダは後続の二人を振り返りもせず進んでいく。

 その様子を苦笑しながら見ていた女に、傍らに控えていた3人の中でもっとも小柄な尼僧が問いかけた。

「ベラ、教会に着いた後はどうする?」

「そうねえ。まずは実地調査、ってところかしら?」

 頭一つ下にある尼僧を見つめながら、ベラは話す。対する小柄な尼僧は、エイダに負けず劣らず気の強そうな、そして好奇心の強い碧眼を不満げに揺らした。

 その意味を、ベラだけはきちんと把握することが出来た。困ったように苦笑すると、彼女が話し出す前にベラが釘を刺す。

「ダメよ、エステル。荒事は」

 そう言われた小柄な娘、エステルは一瞬はっとした顔になり、その直後に赤面した。母、いや姉に叱られたような顔をする尼僧を、ベラはやはり穏やかな顔で見つめていた。

 エステルはしばらくうつむいてその赤面を隠していたが、ベラがエイダに遅れてはならないと、エステルを促したために覚束無い足取りながらも歩き始めた。



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