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BESTOWERS
【ファンタジー 官能小説】

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Rasputin T-1

 豪華にして絢爛。壮大にして荘厳。それがこの部屋の印象だった。部屋は一流の芸術品であふれかえっていた。法皇領から職人を呼んで作らせた天井画。帝都で作られた壺、観賞用の甲冑。自治都市から輸入した絵画などだ。
 部屋の中央には、この部屋にふさわしい天蓋付きのベッドがあり、二人の人間が寝息を立てている。規則的に上下する毛布も、庶民が一年間飲まず食わずで金を貯めても手に入らないものだ。
 民が羨むような部屋。だが奇妙なことといえば、その部屋にぼうっと立つ人があることだった。
 流れるような金髪。翡翠色の目。そして薄い唇を持つその人間は、娘だった。彼女は簡素な寝間着姿でぼうっと、立ち尽くしている。先ほどから、天蓋の下で眠る二人から目を反らさずに。

 突如彼女は、すっと、見る者を凍えさせるような笑みを浮かべた。忌まわしい悪魔崇拝者が邪悪な儀式を完成させたときに浮かべるような、そんな笑みである。

 一歩、二歩。と、彼女は足を踏み出す。天蓋付きのベッドに向けて、床に敷き詰められたカーペットを裸足のままのそり、のそりと歩いて行く。夢遊病のような足取りでありながら、笑みを顔に貼り付けたまま、歩く・

 そしてベッドの前までたどり着いた。眠りの海に包まれる二人の顔をじいっと凝視する。彼女がよく知った顔だ。よく知っていた。

「父上。母上」

 消え入りそうな抑揚のない声で娘がつぶやくと、その美しい顔を醜悪に歪めた。

 そして、腕を振り下ろす。

 硬質の物体が、軟質の物体を突き破る音と、感触が娘に伝わる。撒き散らしたのは、父の鮮血だ。柄に装飾の付いたナイフを持つ右手には、父の鮮血がこびり付く。娘の哄笑が瀟洒な部屋に響く。

 母親が起きた。狂ったように笑い続ける娘を見ると、一瞬たじろぐが、すぐに母として彼女を叱らねばなるまいという気持ちになったのか、表情を厳しいものに変化させた。

 だが、母の口から叱責の言葉が出てくる前に、娘が再び右手をふるう。

 母親の額に直撃したナイフは、あっさりと皮膚を貫いていく。

 厳しい表情のまま、母は崩れ落ちた。天蓋付きのベッドは、今や鮮血塗れの屠殺場だ。

 自らの屠った死体を眺め、うっとりと、娘は両腕で自分を抱きしめる。返り血に染まった腕で、簡素な寝間着は紅に染まった。しかし彼女はそんなことを気にするでもなく、後ろへ振り向く。

「これでいいのでしょう? ラスプーチン」

 問われた先には、いつからそこにいたのだろうか。明かりの落とされた室内に一人の男がいた。いや、それは頭からすっぽりとフードを被っているため、男なのか女なのか、その判別は付かない。だが闇に溶け込むように佇んでいたその者の名前は、男の名前だった。

「ええ……これで、貴女の思うままで御座います。姫君」

 彼女の思い描く通りの答えが返ってきたのだろう。恍惚とした表情を浮かべながら、美しい娘は自らを抱く力を強めた。古の巫女のように天を仰ぎうっとりと目を蕩けさせる娘の下半身は、言い訳が出来ないほど濡れていた。

 フードの男は、にっこりと、布の隙間から垣間見える口を笑わせた。


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