「超合体浪速ロボ・ツウテンカイザーⅢ～新世界征服ロボの挑戦～」-4
『あいやぁ…じゃないっ！！大体、この強力な新世界征服ロボでどうして大阪の極小な一部地域を征服しなければならないのだ…』
「むぅっ！そんなん、誰が決めたんねんなっ！！大きなロボットでジャンジャン横町を征服したらあかんて、いつ国会で決まったんですぅ？ジャンジャン横町かて征服されたら困る人、大勢おるねんでっ！」
『だからって、誰が好き好んで巨大ロボットでジャンジャン何とかを征服せねばならんのだっ！？常識で考えれば分かるだろうがっ！！それに、いつの間にか地域が更に狭まっているぞっ！！』
「常識って何やねんなっ！？そんな常識、いつ何処で誰が考えたん？西暦何年何月何日？何時何分何秒フラット？？火星が何回まわった日？そもそもお姉ちゃん、大阪を莫迦にしてるやろ？」
『ええいっ！小学生の喧嘩じゃあるまいし。大阪だろうがジャンジャン横町だろうが全部ひっくるめてまるごとこの私が征服してくれるっ！！それで文句は無かろうっ！！それよりこの私の挑戦を受けるのか受けないのかっ！？勿論受けなければ各ドームの重力制御ユニットを順番に破壊していってやるからなっ！！』
「ジャンジャン横町をおまけ扱いすなぁあっ！！挑戦でも何でも受けてやるわっ！そんなガラクタロボットやっつけるなんて余裕のよっちゃん片目のけんけんやっ！！ツウテンカイザーに負けて泣きべそかくなぁあっ！！」
『それではアマゾニス平原で待っているぞっ！！泣きべそをかくのはどちらか、今から楽しみだな…ふんっ！！』
売り言葉に買い言葉。ユーナはそう告げると一方的に回線を切ってしまった。サウンドノイズを眺めながら、深い溜息を吐く一同。唯一ひよこだけが顔を左右に引き延ばし、舌を出して消えたユーナに悪態をついている。
「……ふう、ともあれ、話し合いの通じない相手であることだけは確かね」
呆れた調子で肩をすくめるスチュワルダ。
「そしたら、私らはあの傲慢ファシスト女をやっつけてくるから」
そう言って司令室をあとにするひよこと、それに続く恭子。今度は王鷹も引き留めることはしなかったが、ひよこと同時に司令室を出る十文字博士に気がつき、首を傾げる。
「博士、どちらへ？」
「ん、いやな…。ユーナの残していった部屋の荷物がそのまま倉庫に残っておってな、何か敵の情報につながる物が無いか探してみるわ…」
そう言って司令室を出る十文字博士。一方で逸るひよこはツウテンカイザーで既に火星の大空へと飛び出していた。
『るーー…るー、闘争本能はより高次への生命へ進化する為に…は、不可欠。昇華する二元論…。諸刃の剣………るー、るーーー…』
ユーナの指定したアマゾニス平原は火星移民の黎明期にドーム都市群が栄えた地域である。他の地域に都市が建設され始めると、重力制御の不安定な初期のドームは居住性に問題があり、過疎化が進んだ。今は放棄されたドームがまばらに点在するのみで、巨大なロボット同士が戦うには打ってつけの場所となっている。
「あれがジャンジャン横町征服を（も）企む悪のロボットやな…」
グランパスドラゴンが視認できる距離まで近付くと、ひよこは武者震いを感じながらそう呟いた。ユーナの造り上げた悪の巨大ロボットは成る程設計思想がツウテンカイザーに似ており、二体の動物メカが合体する点や、動物の種類が違えど頭部と胸部にそれぞれの動物の頭部が組み込まれているところが共通している。しかし、その面構えは悪役のそれに相応しく悪魔的で、また、胸部に組み込まれた金色に輝くシャチの頭部など、些か趣味の悪さも感じられた。
「六甲颪の風に乗り！超合体浪花ロボツウテンカイザー、頂上無敵に只今参上っ！！」
ひよこの名乗り口上と共にツウテンカイザーが咆哮を上げる。
「ふん、こしゃくなっ！！グランパスドラゴンが今、その正義面を粉砕してくれるっ！！喰らえっ！独裁ミサァイルッ！！」
ツウテンカイザーが地上に降りるのを待たずして、グランパスドラゴンから無数のミサイルが発射され、回避できないツウテンカイザーを襲う。
「きゃああああっ！！？」
「うわぁあっ！！いきなり不意打ちとは卑怯やないかぁあっ！？」
激しい衝撃を受けるコクピットの中でひよこと恭子は悲鳴を上げた。しかし、ユーナは涼しい顔でひよこの罵声を受け流す。
「ふん、プロレスか何かの試合のように、ゴングが鳴るとでも思っていたのか？それに、正義に卑怯と罵られてこそ悪の誉れ。もう一度、独裁ミサイルを喰らえっ！！」
再びグランパスドラゴンからミサイルが発射されるが、今度はツウテンカイザーもツウテンミサイルで応戦する。