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異界幻想
【ファンタジー 官能小説】

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異界幻想ゼヴ・クルルファータ-40

 エストックとは、割と相性の悪い対戦相手だ。
 対象を突き抜く事によってダメージを与えるのが、エストックだ。
 痛覚がなく、魔導を用いて動かされているパペットが相手では、その場に体を縫い止めてやったりする事は不可能である。
 しかし、やり方はある。
 デュガリアは接近してパリーイング・ダガーを振るい、パペットの肘関節部に刃先をねじ込んだ。
 そのまま勢いに任せ、関節を破壊する。
 片方の肘から先が動かなくなった事を認識したのか、パペットは腕をぶらぶらさせながらもう片方の手を振り上げる。
 今度は肩部にティトーの小剣が差し込まれ、関節を破壊しつつ腕をまるごと引き抜く。
 デュガリアはパペットに足払いをかけて転倒させると、各関節を手際よく破壊した。
 痛覚のない木偶人形だろうと、こうして手足をもいでしまえばこれ以上煩わされる事はない。
 動けなくなった事が分からないのか、パペットの胴体はもぞもぞと震えている。
「これ一体だけですか?」
「今の所はな」
「おざなりな警備ですねぇ」
 追加がない事を確認したデュガリアは、四人を廊下に出して厨房のドアを閉めた。
 この頃になると血生臭さには鼻が麻痺したようで、深花は顔色は悪いもののえづいてはいなかった。
「こんな所に侵入しようとする物好きは俺達だけだろう。おざなりにもなるさ」
 強盗だって、手間隙をかけてこんな要塞もどきに入り込もうとは思うまい。
「ですね」
 ティトーの言葉に短く同意すると、デュガリアは慎重に歩き出した。
 まさか落とし穴はないだろうが、身内からもガイキチ一歩手前と評される男が作った要塞だ。
 どんな仕掛けがあるか、分かったものではない。
 先ほどのパペットが格納されていたと思われる天井の穴の先に、上方向と下方向に伸びた階段があった。
「……下でよろしいですね?」
 上は居住区、下はフラウ収容施設と見当をつけ、デュガリアは言う。
「異論はない。行くぞ」
 ティトーの顔を一瞥すると、デュガリアは頷いた。
「では、行きましょう」


 地下に侵入してすぐに気づいたのは、男の哄笑だった。
 そして、何かが折れていく不快な音が重なって聞こえる。
 地下区画唯一のドアを、デュガリアは開けた。
 こちらに背を向けた水色の男が、まず目に入る。
 そして……石壁にもたせ掛けられている、それ。
「い……!」
 もぞもぞと蠢く肉塊が捜し求めていた彼女だと気づいた深花の喉から、絶叫がほとばしる。
「いやあああああっっっ!!」
 デュガリアの脇を、金色がすり抜けた。
 突然の絶叫に振り返った水色の男の横っ面に、ヴェルヒドの拳が炸裂する。
「ぐへっ!?」
 たまらず吹っ飛んだザグロヴの前に、ウィンダリュードが立った。
「素敵なお家ねぇ、ザグロヴ」
 壁に叩きつけられて咳込むザグロヴの股間に、ウィンダリュードの足が割り込む。
 腹や顔ではダメージが与えられない事を承知しているので、何かあったら確実にダメージを食らわせる事ができる場所を選んだのだ。
 そこを踏みにじられる痛みは四人ともよく分かっていて微妙な顔をしたが、誰もウィンダリュードを止めなかった。
「あたしらに内緒でこんなとこを作って、一体何してたのかしらぁ?」
 にこやかな口調で問いながら、ウィンダリュードは足に力を込めた。


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