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異界幻想
【ファンタジー 官能小説】

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異界幻想ゼヴ・クルルファータ-22

「こんな所にいたのか」
 暗がりから、のっそりと男が姿を現した。
 大きくて、いかにも頑丈そうな体格。
 短く刈り込まれた金髪に、同色の右目。
 左目は、縦に裂けて治癒した傷痕に覆われている。
「なっ……!?」
 男は、敵レグヅィオルシュのパイロットだった。
「剣を置け、小僧。今の所、我々は争う立場にない」
「そうよぉ。せっかく迎えに来てあげたんだから、感謝しなさいよね」
 大男の後ろから、濃いピンク色がこぼれた。
 華奢な少女が、姿を現す。
「あなた達は……!」
「バランフォルシュ様がダェル・ナタルに用意した援軍、よ」
 つんと顎を反らし、少女は言った。
「……いい顔つきになったな」
 中腰の深花を見て、大男は顔を綻ばせる。
「支援体勢に入っていなければ、ぜひ手合わせ願いたい所だったが」
 ジュリアスに視線を向け、大男はそう続けた。
「……今すぐ消し炭に変えてやってもいいぞ?」
 敵意むき出しの顔で、ジュリアスは吐き捨てる。
「ジュリアス」
 その態度を咎めてから、深花は立ち上がった。
「そちらに敵意は……まあ大有りでしょうけど、危害を加える気は本当になさそうですね」
 その発言に、三人は意外そうな顔をした。
「危害を加える気があるのでしたら、わざわざ音を立てて近づいてきたり呑気におしゃべりしたりしないで、問答無用で襲ってきてもおかしくないはずですもの」
 自分の剣をジュリアスに預けると、深花は二人に近づいた。
「みっ……!?」
「生身でお会いするのは初めてですね。私はミルカ、深花と申します」
 天敵二人は、呆気にとられた表情を浮かべる。
 しかし、男がすぐに破顔した。
「それなりに生きてきたが、まさか天敵から自己紹介される日がくるとはな!」
 豪快に笑うと、男は一礼する。
「俺はアラクスィア、ヴェルヒド。こっちのちんまいのがサリュリウェル、ウィンダリュードだ」
「ちんまいは余計よっ」
 ピンクの少女ウィンダリュードは、金色の大男ヴェルヒドの背中に拳を叩きつけた。
 いかにも頑健そうな体格からして、ヴェルヒドは殴られても全く痛くなさそうだ。
「お前は実際にちんまいだろうが。見ろお前、ミルカより小さいぞ」
 ヴェルヒドは、ウィンダリュードを深花の前に押し出す。
 彼女が精一杯爪先で踏ん張って背伸びしても、頭頂部は深花の額に届くか届かないかくらいしかない。
「くやじ〜っ!あたしが一番年食ってるのに〜!」
 地団駄を踏むウィンダリュードの頭を撫でて彼女をなだめると、ヴェルヒドは表情を引き締めた。
「バランフォルシュの話によるとこちらに来るのは四人という事だったが、残り二人はどこへ消えた?」
「それが……」
 深花は視線を流し、ジュリアスを見る。
「……到着直前に穴がぶっ壊れてな。なんとか深花だけは確保できたが、二人はどこかに吹っ飛ばされたよ」
 僅かに肩をすくめ、ジュリアスは答えた。
 預けられた小剣共々、自分の剣を脇に置く。
 深花を容易に縊り殺せる位置にありながら何もしない……どころかじゃれつく様を見ていれば、危害を加える気がない事は明らかだ。
「吹っ飛ばされた?」
 ヴェルヒドは、考え込んだ。
「では、二人を捜す事が優先だな」
「頼む。俺達じゃ土地勘がないから、どこをどう捜せばいいのか分からないんだ」
 お互いに誤解のないよう、ある程度の距離を置いて慎重に受け答えをしている二人。
 小さい背丈を揶揄されてむくれていた少女は、そのやり取りを見て顔を引き締めた。
「ねえ、あんた」
 目の前にいる深花へ、顔を上向けて質問する。
「いなくなった二人の特徴は?」
「特徴?」
 問い返す深花を見て、ウィンダリュードは歯を剥き出す。


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