瑞希ちゃんin〆切三日前!byとある成年漫画家のアシスタント -1
俺の名前はこの際どうでもいいと思う。
まぁ、とある有名成年漫画家のアシスタント…とだけ言っておこう。
このとある有名成年漫画家…先生の描くリアルでありながらリアル過ぎない絵や台詞まわしに魅せられて、俺は先生のアシスタントになった。
そう…。
先生のような漫画家になりたくて…。
「っ…ん、んっ」
「もう少し筆先が固いので擦ってみてくれ」
「はい」
先生に少しでも近付けたら…と。
そう思っていた。
先生の作風の源がなんなのかも、正直知りたかった。
けれどまさかソレが、こんな…。
「んん、あ!…ふっ、ぅん!」
俺は先生の指示通りに固めの絵具筆に持ち替えて、同じように滑らせた。
すると途端に、甲高い女性の声が部屋に響いた。
俺は思わず筆の動きを止めた。
俺の目の前には、薄いブラウス越しにハッキリと見てとれる乳房がその突起を主張している。
「止めるな!つづけるんだ!」
「は、はい」
先生は鉛筆を走らせながら、俺に怒鳴った。
数時間前まで真っ白だった先生の原稿は、今や提出予定の半分ほどの下書きが終わっている。
「ぁ、あっ…ん!ぅっ…ん、あ!んん!」
筆が突起をかすめる度に、声を押さえようとして鼻から抜けるような、そんな声があがった。
女性の、声だ。
俺の目の前に座っている…女性の声。
今日は先生の〆切三日前だ。
担当の某編集が来て、先生と二三話すとすぐに出ていった。
それから暫くして戻ってきた某編集は、女性を一人伴っていた。
清純そうな容姿に、柔らかな笑み。
胸の起伏からの流れるような艶かしい腰に続くライン…。
貞淑な人妻を思い起こさせるような、そんな女性だった。
そう…それは、先生が今まさに描こうとしている新連載のヒロインのイメージにピッタリだった。
夫が行方不明になったままの貞淑な妻と、夫の甥である画家との禁断の日々。
初めは拒んでいた妻だったが、画家の周到な計画にはまり…貞淑な妻は娼婦のようにいつしか自ら画家の肉棒を求めるように…。
「んんっ…、ふぅっ…ん!あ、ぁ、んん…っ!」
某編集が連れてきたその女性は、瑞希と言った。
瑞希さんは派遣メイドをしているらしく、先生と某編集とはもう随分長いらしい。
瑞希さんはおもむろに着ていたコートを脱ぐと、白いブラウスと黒いミニのタイトスカートと言う地味な格好だった。
けれど…瑞希さんの艶かしい身体のラインが強調されているのと、その豊満な胸が、無防備に…ノーブラで…白いブラウス一枚だけに隔たれていると思うと………。
先生はそんな瑞希さんにあれやこれやと指示をだし、瑞希さんは言われるままにその指示に従っていた。
ご主人様の要望に応えるメイド。
それはあの、貞淑な人妻の乱れていく行程をなぞっていた。
先生は今までも、思い描くヒロインを瑞希さんを使って具現化していたのだ。
先生の作風の秘密は、コレだった。
「ちゃんと撮れてるか?」
「撮れてますよ。バッチリ」
某編集はカメラをまわしている。
ペン入れのさいに確認するために必要だからと、ビデオに残しているらしい。
瑞希さんはと言えば、荒い呼吸を整えながら某編集のまわすカメラに微笑んだ。
「よし。じゃぁ、瑞希ちゃん。コイツを画家だと思って、いいかな?」
「は、はい」
「ほら、お前はカメラだ。グズグズするな!コイツは画家の役すんだからな」
俺が瑞希さんのその微笑みに見とれていると、先生に腕を引っ張られ
た。
どうやら俺は今度はカメラ役で、某編集が画家役をするようだ。
「瑞希さん、よろしく」
「はい。よろしくお願いします」
二人は軽く挨拶すると、自然にそういう…艶かしい雰囲気を纏った。
きっともう、今更なんだろうなと、俺はレンズ越しに二人を見ながら思った。
某編集が、瑞希さんの細い腰に手を回す。
瑞希さんの肩が少し跳ねた。
もう演技は始まっているらしい。
「っ…」
「大丈夫。怖がらなくていいよ」
某編集が瑞希さんを優しく抱きしめ、そしてそのまま、ゆっくりと押し倒した。
自然な流れで二人は唇を合わせる。
舌を絡め、唾液を交換するように某編集が瑞希さんの唇を貪っている。
瑞希さんは本当か演技なのか、慣れない風に苦しそうに身をよじり、某編集の胸を叩いた。
「はっ、っ…はぁ、はぁ」
二人の唇が離れた。
銀色に光る糸が、二人の間にかかる。
某編集はもう一度軽く瑞希さんの唇を舐めると、そのまま瑞希さんの首筋に舌を這わした。