其の七-1
もう両手でくつろげている必要もなくなった。つつましく閉じていた縦割れは、充血してポッテリと外側にめくれ、折りたたまれていた襞も拡がって中心部にポッカリと口を開いている。そのさらに奥からは透明な蜜がトロトロとあふれだして、そこら一帯はもちろん、小さくすぼまった蕾までをもテラテラと濡れ光らせている。その眺めに年甲斐もなくはやり立ちそうになる八十平だが、そこをグッとこらえる。
「さて、まずは一度女の悦びってものを教えてやるよ」
そう言って、乳ぶさをあやす千鶴へと目配せをする。それを受けた千鶴は、白く整った美貌を小さく縦に振り、なんともいえない艶冶な微笑を返してきた。
「さあ、気持ちよくなりましょうね」
そう耳元に囁いてから、桜色に染まった耳たぶを軽く噛む。ひッ、と息を呑んで身を捩ったところで両の乳首を転がされると、アッ、アッ、と愛らしい悲鳴を小さくあげながら体をくねらせ始める。秀でた額に汗を浮かべて桜色に上気させ、眼鏡のレンズの向こうで眼を糸のように細めながら長い睫毛を顫わせ、半開きの唇をわななかせている。そんなどうしようもなく感じてしまっている美由紀の表情が、八十平を有頂天にする。
千鶴の愛撫に腰が跳ねたところで、ふたたび責めを加えだす。
たまらず溢れさせている蜜を追うように、蟻の戸渡りへと舌を這わせる。その下でおびえるようにヒクリヒクリとうごめいている可愛らしいアヌスのくぼみにとがらせた舌の先を触れさせた。
「ヒッ」
また腰が跳ねた。
「いやッ……そんな、汚いとこ……」
悲鳴とともに蕾が小さく縮まり、また爆ぜるようにせり出した。おののきひくつくそこを八十平の舌がくすぐるように円を描いてなぞり、ふたたびせり出したところを見図らって中心をツンツンと小突く。百合の花の匂いがにわかに強まり、歔き声もあからさまになる。
「こわがることはないわ、お尻もとっても気持ちいいんだから」
千鶴の言葉に応えるように、八十平の責めがアヌスへと集中し始める。予想もしていなかった部分への刺激は、確かに快感となって美由紀を翻弄した。あらぬ場所に口吻を受けているという汚辱感と共に、腰の底から得体の知れないものが背骨を通って伸び上がってくる。そして、アッ、アッ、といった小さな悲鳴となって口からとびだす。
(な、なんで気持ちいいの……)
そんな場所をいじられているのに、その感覚がはっきりと心地よいことがたまらなく羞ずかしい。
舌先から伝わるうごめきの様子、そして噴きこぼされる悲鳴の調子、そんなものから美由紀の体がすっかり追いつめられていることを八十平は感じた。もうあたりは自分が吐きかけたつばきと美由紀が我知らず絞り出した蜜とで汚れ切り、とても処女のものとは思えないありさまを呈している。芽はとがり切り、色濃く染まった花びらは開ききって蜜にまみれ、蕾すらふっくりと盛り上がっている。
(そろそろ気をやらせてみるか)
いま一度面を伏せた八十平は、今度こそ美由紀を追いつめるべく舌をさしのべた。ううむ、と生臭い呻きをもらして美由紀の体が反る。唇でくるんだ肉芽を吸い上げ、こぼれ出る蜜をすくった指先で奥の蕾をゆるゆると揉みほぐす。
八十平の意図を察して千鶴も美由紀を追い立て始める。細い指先を埋めるように乳ぶさへと食い込ませ、突き立った頂点を容赦なく爪先でこそぎたてる。すっかり火のついた体は、そんな荒々しい愛撫ですら快楽として受け入れてしまう。
「やめて……ゆるして……」
顫える声で訴えるが、語尾は歔き声となってかすれてしまう。歔きながらたまらず腰をゆする。むずかるようにゆれるその腰に合わせ、八十平がテクニックを凝らした。たちまち腰の動きが淫らなリズムを刻みはじめる。
「ああッ……ダメッ……だめになっちゃう……」
なにがだめになるのかはわからない。ただ、今の自分が壊されてゆくことだけは確かだ。それがこわい。だが、心がどれほどおびえても、すっかりはずみのついた体はもう後戻りは効かない。まっしぐらに見知らぬ場所に向かって突き進んでゆく。
「あ、いや……あ……」
反り返りながらズリ上がり、千鶴の腕の中深くへと身を預ける。
八十平の舌先に激しい慄えが伝わってくる。それにあわせて舌を使うたび、あふれかえった熱湯がピチャピチャ音を立てている。慄えはついに腰全体にまで広がると、ブルッと引き痙るように跳ねて八十平の顔に押しつけられる。
「う、うんッ……」
いきむような声がのけ反った喉から絞り出された。引き痙りはついに全身におよんだ。びくびくとなまなましく痙攣を繰り返すその体は、取らされた姿勢もあいまって実験用の蛙を思わせた。そして、こと切れたようにグッタリと弛緩する。
「いったのね。気持ち、よかったでしょう」
そう言いながら、千鶴は逆しまに反り返った顔を両手ではさみ、接吻した。力なく唇をあずけながら美由紀はシクシク泣き出した。薄暗い部屋に哀しい泣き声が響く。だが、虜囚の身には感傷に浸る余裕など与えられなかった。
「さて、それじゃあそろそろ行くかね」
美由紀がほとしばらせたものでべったりと汚した口元を拭いながら、八十平が立ちあがる。またたくまに着ているものをぬいで素っ裸になってしまう。
「どうだね、わしのものは?」
そう言って中年太りで出っ張った腹の下で、ここばかりは若者に負けないほどの勢いでそそり立った物を自慢げにしごいて見せる。
「あ……あ……」
恐ろしさに声も出ない美由紀は、力なく首を振るばかりだ。眼鏡の奥の瞳はカッと見開いて、取りつかれたように凶悪な肉の凶器を見つめたままだ。恐ろしすぎて視線をそらすことすらできない。