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金沢にて
【二次創作 官能小説】

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其の参-1

(ごめんなさい……)
 声にも出さず、美由紀は謝っていた。
 今こそはっきりとわかる。自分はあの東京から来る少年に恋しているのだと。「こんな男に触られるくらいなら」とっさに脳裏に浮かんだ姿は、まさしくあの少年の物に他ならなかった。
 だが、もう遅い。恥ずかしいほどに豊かに実った乳ぶさは、中年男のあらけない手に蹂躙されてしまった。もちろん、それだけで済むはずもない、きっと純潔もこの男に奪われてしまうのだ。
「あら、どうしたの? 好きな人のことでも思い出したのかしら」
 千鶴の勘は相変わらず鋭い。ずばりと指摘され、一瞬美由紀の面貌に狼狽の色が浮かび、指摘の正しさを伝えてしまう。
「心配することはないわ。大丈夫、そのうちお家にも帰してあげる。その人にもまた会えるわ」
 にっこりと微笑む。同性である美由紀ですらとろけてしまいそうな、そんな笑みだ。
「それにね、初めては慣れた人にしてもらうのが一番いいのよ。たっぷりと感じられる体にしてあげますからね」
 だが、その笑みはそのままに、すぐさまそんなことを言って怯えさせる。あきらかに、この美しい女性はなにかがズレていた。どこかが壊れている。むしろ、自分を抱きすくめている男の方が、単純な獣欲にもとずいていると思われる分、常識的な気すらした。
「あのね、こう見えて八十平さんは女の子の扱いはとってもお上手なのよ。きっと美由紀ちゃんもすぐ気持ちよくしてもらえるわよ。ね、八十平さん?」
「もちろんですよ、お嬢様」
 そう答えるや否や、八十平の手付きが変わる。ただ蹂躙して弄んでいた手が、感覚を呼び覚ます丁寧な愛撫になってゆく。
 感じたくなどなかった。もしこんな男の手に感じてしまったら、きっと自分が許せなくなると美由紀は思った。もう二度とあの少年に顔向けできなくなると思った。
 だが、八十平の手は千鶴が言ったように巧みに動いた。
 さわさわと撫でさすり、ゆるゆると揉みこむ。緩急自在に変化して、敏感な柔肌を微妙に刺激してくる。胸の奥に火が灯り、少しづつ熱がこもりだした気がする。狭い部屋に満たされた奇妙な香りが、なおいっそう狂おしい気持ちにさせる。
 美由紀は知らなかったが、この地下牢に焚きこめられている香は、嗅ぐものに性欲の更新と性感の増大をもたらす鬼川家に古くから伝わる淫香なのだ。
「はあ、はあ」
 いつしか美由紀の息が荒くなっていた。淫香の効果か、八十平の巧みな愛撫ゆえか、体の底に灯った火が、ますます熱く燃えはじめていた。
「ねえ、八十平さん、片方私に貸してくれない?」
 見ているだけでは手持ちぶさたなのか、千鶴がねだる。
「どうぞとうぞ、お嬢様」
 自分の体がまるで物でもあるかのようなそのやりとりが美由紀の心を傷つけるが、頭の芯がボウと霞みはじめていて、なんだかどうでもいいことのようにも思えだす。
「ああっ」
 甘い声をあげてしまった。
 八十平のゴツゴツとした手とは対照的な、千鶴の繊手の優しい感覚が、本当に気持ちよかったのだ。
 美由紀のからだに取りつく男女が、言葉を出さず、視線のみを見交わしてほくそえんだ。だが、美由紀には、そんな二人を省みるゆとりはもう残されていない。
「ヒッ」
 息を飲んだ美由紀は、グッと背すじを反り上がらせた。はからずもおもちゃにされている胸を突きだし、八十平に深く体をあずけた格好になる。
(な、なんなの……?)
 美由紀は自分の身に何が起きたかわからなかった。もてあそばれる乳ぶさにピリッと鋭い電流が走った。それが彼女の知覚の全てだった。
 実は八十平が、柔らかな肉の頂きでいつしかツンとしこり立った乳首をちょっぴりひねってみたのだった。
「大きいのは鈍いのが多いんだが、お嬢ちゃんのは違うようだな」
 耳元で息を吐きかけるようにして囁かれる。
「感じやすいのは、女の子にとって幸せなことなのよ」
 千鶴はそう言って、唇を先ほどとは反対側の乳首へと近づける。
「くッ」
 軽くくちづけられた美由紀の体がふたたび反る。
「うッ、うッ、くうッ……ヒイーッ」
 かさにかかって敏感な蕾を責めはじめた二人によって、美由紀の体が羞ずかしく躍る。
「や、やめて……いや……ああッ」
 秀でた額に汗を浮かべながら、ただ首を振って与えられる刺激に翻弄されるばかりの美由紀。
「さて、そろそろいちばん肝心な場所を見せてもらおうか」
 そう言いながらあぐらの上から美由紀を抱き下ろし、下半身の方へと移動する。美由紀はこれまでの軽い責めだけで、はあはあと息を荒げて先端の桜色を唾に濡れ光らせた乳ぶさをふるふる揺することしか出来なくなっていた。
 そんな風情の美由紀の上半身に、千鶴が添い寝するように覆い被さる。
「可愛いわ、美由紀ちゃん」
 そして、がっくりと力を失った首に腕を差し入れてかきいだき、あらく息を吐く唇にくちづけする。
(ああ、そんな……)
 初めてのくちづけだった。こんなことならあの犀川のほとりであの少年にキスをせがめばよかったと思った。雰囲気は盛りあがっていたのに、彼女の潔癖さが土壇場でそれを拒ませたのだ。
 だが、意に染まぬ初めてのくちづけは甘かった。美しい年上の女性の唾液は甘く、舌は柔らかく、ただひたすらに美由紀の内に切ないものを呼び起こす。荒い息を吸い取られ、口の中を探られた。甘い唾液をトロリと流しこまれ、縮こまった舌を絡めとられた。
 だが、下半身に起こった違和感が、美しい同性とのくちづけにうっとりとなっていた美由紀を現実に引き戻した。腰回りにとりついた八十平が、腰の打ち合わせを大きくくつろげて彼女の下半身を剥き出しにしていたのだ。気づいたときにはもう彼女の下半身は腰回りまですっかりゴマ塩頭の中年男の視線に晒していた。


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