悪魔とオタクと冷静男-10
「ふざけんな!オレのどこが頭悪い!」
「全部だよ、全部。普通、告白する相手を間違えるか?」
「ぐっ…!それは緊張しててだな…」
「大体、下校中にいきなり見知らぬ少年に告白されたら、普通はひくな」
「見知らぬやつなんかじゃない!」
「なら本人に確認してみろよ」
「い、いいぞ」
そう言ってつばさと向き合う。しかし、恥ずかしいのか、なかなか言い出さない。
「早く聞けよ」
「う、うるせえ。今聞くんだよ!」
「…びびってんじゃないのか?」
「そ、そんなわけねーだろ!」
「なら早く…」
「分かってるっての!黙ってろ!」
からかい続けると話が先に進まないので、仕方なく黙る。
沈黙の中で、おそるおそると言った感じで尋ねる佐藤。
「あ、あの…」
止まるなよ。さっさと聞け。
「お、オレのこと、知ってますよね?」
「…えーっと、誰でしたっけ?」
「な…!」
やっぱり初対面じゃないか。
「は、はは。冗談…ですよね?」
「ごめんなさい。記憶に無いです」
あっさりと言うつばさ。人のこと言えないぐらいにストレートだな。
一方佐藤の方は、ズーン、という擬音が聞こえてきそうなほど落ち込んでいる。その落ち込み様はさっきよりも凄い。今にも自殺しそうだ。
「…お前のこと知らないじゃないか」
「……」
「いい病院、探したほうがいいぞ」
「なにかの間違いだ!そうだ、そうに決まってる!」
「…なら、いつ会ったんだよ」
「あれは半年前の雨の日…」
あ、なんか長くなりそうな予感。興味もないし聞かなければよかった…
「転んでいた彼女を起こしてあげた」
「…………で?」
「え?『…で?』って言われても…」
「…まさか、それだけか?」
「当然だろ?」
やけに偉そうに言う佐藤。やっぱりこいつバカだな。
「ほとんど初対面と同じじゃないか」
「別れ際にちゃんと名乗ったさ!」
「普通は忘れる」
それを聞いて、愕然とした表情を浮かべる佐藤。
「そ、そんな…オレは片時も忘れたことはなかったのに…」
「…哀れだな」
「くっ……」
「お前は頑張ったよ。でも今回は諦めろ」
「………………いや、まだだ!オレはまだ諦めないぞ!」
「……」
根性あるな…。
「覚えていないなら、これから記憶に残るようにするのみ!」
「……」
「今日はその壮大な野望への第一歩だ!」
「……」
「と言うことで、オレはこれから修業に出ます!つばささん、いつかあなたに相応しい男になって戻ってきますね!さ〜よ〜う〜な〜ら〜!」
「……」
そう言って走り去る佐藤。最初から最後までうるさいやつだったな。