予想外の贈り物-4
「何照れてんだよ。自分でそう言って欲しいって言ったんだろ?」
「そうですけど…なんか慣れなくて…でももう一回…」
名前を耳元で囁くとくすぐったそうに、満足そうに微笑んで頬にキスをくれた。キスが頬から唇へと移動する。唇だけが触れ合っていたキスはだんだん舌が絡みあい、ディープなものへと変わっていく。
「主任…やだ…」
「何がイヤだ?っていうかさ、自分だけ主任って呼び方ずるくない?」
たぶん、オレのきわどい部分が固くなってあたっているからだろう。頬が再び赤くなる。
「だって主任て呼ぶの、私だけですよ?」
「ダメ。なんか悪いことしてるみたいでイヤだ」
「悪いことって?」
「なんかセクハラしてるみたいだから却下」
「じゃぁ、鈴木さん」
「じゃぁってなんだ、じゃぁって。名前で呼べって」
「だってそしたらみんなと一緒じゃないですか。私も私だけ特別がいいです」
「オマエには10年早い」
「何それ、しゅーちゃんの意地悪っ」
「しゅ、しゅーちゃんってオマエなぁっ」
「私はオマエじゃありませんっ」
「しょうがないなぁ。チカにだけ許す」
真っ赤になったオレを見て、チカが笑う。
「でもプライベートな時だけな。職場では今まで通り鈴木だぞ?」
「わかってます、鈴木主任」
お互い笑ってもう一度キスを交わした。再びディープなものへ変わっていき、チカの息もオレの息もどんどん上がっていく。唇を離したときにはお互いの唾が糸になってひいていた。それを合図に、チカを下に横たわらせ、覆いかぶさるように重なる。首筋、鎖骨、胸のふくらみ、胸の上の蕾。順々に唇を滑らせていく。チカの唇から漏れる、熱い吐息。蕾を唇に含んだときに、吐息が切ない声に変わる。オレを求めてくれている証。唇での愛撫を続けたままヘッドボードに置かれた避妊具へ手を伸ばす。備え付けのものを使うのは抵抗がないわけではないが、ナマで彼女を危険にさらすよりは、と思ったのだ。まさかこういう事態になるとは思ってもみなかったから用意などしていない。しっかりと両方の蕾が固くなったことを確認して、さらに下へと唇を滑らせていく。黒い茂みの少し上にたどり着いたところで足を開かせる。
「昨日もっと恥ずかしい姿見せてくれたでしょ?」
抵抗するチカにそう声をかけると、イヤといいながらも自分で少し開いてくれた。チカの蜜が溢れ出てくる場所の上にある蕾を舌で刺激する。昨日電マで刺激を与え続けた場所。チカの喘ぎ声が一段と高くなる。
「オレの舌と電マとどっちがいいの?」
「や、やだ…そんなこと聞かないでっ」
「どっち?言わなきゃやめる」
そう言いながらもやめられるわけなんてないのに。チカに気づかれないように避妊具の袋を破り、きわどい部分に装着しながら、刺激を与え続ける。
「しゅ、しゅーちゃんがいいっ。ねぇ、欲しいのっ」
「何が欲しいの?電マ?」
「違うの!しゅーちゃんが欲しいの。ねぇ、もうお願い。昨日からずっと…」
涙目で懇願するチカをこれ以上苛める気になれず、準備も出来たところで一度唇をチカの唇へ戻す。
「オレももう、チカとひとつになりたい」
「うん…」
チカの足の間に座り直し、正常位でチカを貫く体勢を整える。先端がチカの入口に触れる。蜜で溢れたチカの入口は滑りがよすぎてなかなか狙いが定まらない。腰を押し出して、今だ、という瞬間。
「トゥルルルルルル トゥルルルルルル」
けたたましい音で備え付けられた電話が鳴り響く。顔を見合わせるが鳴り続ける電話に行為を一時中断して受話器を持ち上げる。
「チェックアウトお時間30分前です。お待ちのお客様がいらっしゃいますので延長はご遠慮お願いしたいのですが…」
聞こえてきたのは口調は丁寧なものの、面倒くさそうなオバさんの声。はぁ、と答えるしかなく、受話器を置く。
「チェックアウト30分前で延長不可だってさ」
マヌケな体勢のまま、チカに事情を説明するとチカも苦笑した。
「そういえば、世の中クリスマス3連休ですもんね」
「クリスマス、か。何かこのあと予定あるの?」
「ないです。しゅーちゃんは?」
「あるわけないです。まさか直前にこんな可愛い彼女ができるなんて思ってませんでしたから」
チカのおでこを小突く。人生最大の予想外なクリスマスプレゼントだ。サンタさんってヤツは意外にイキなことをするもんだ。なんて年甲斐もなく思ってみる。
「じゃぁ一旦帰ってデートでもしますか?スーツのままじゃ、せっかくの休みだしな」
「はい。でもしゅーちゃんのスーツ姿、好きよ?」
「ったく。襲うぞっ」
「ダメ。30分じゃ足りないもん!」
チカはガバっと起き上がるとお先に、とバスルームへ消えていった。ムードもなにもありゃしないが、この状況じゃしょうがない。交代でシャワーを浴び、支度を済ませて部屋をあとにする。外に出ると想像以上に風も強く冷え込んでいる。自然とチカの手を取り、コートのポケットにしまっていた。照れたように、チカが笑った。