予想外の贈り物-2
「きゃっ」
驚いた鈴木が短い悲鳴をあげる。
「悪い…大丈夫か?」
「大丈夫なわけないじゃないですか。責任取ってください」
「せ、責任って…」
真っ直ぐオレを見つめていた鈴木がこらえきれない、というように吹き出した。
「冗談ですよ。とりあえずコーヒーでも飲みませんか?」
「あ、あぁ」
すっとベッドから降り、落ちていたバスタオルを身体に巻き付け、備え付けの小さなポットとコーヒーカップを2つ持つと、洗面台のあるほうへ消えていった。その様子をどこかぼんやりと眺めながら、一連の流れを思い返そうと試みる。
昨夜は職場の忘年会だった。隣に座ったのが今年の春異動してきた彼女。周囲とはすっかり打ち解けているようだが、オレはあまりプライベートな会話を交わした記憶がなく、正直隣に座られた時には驚いた、のは覚えている。そうそう、可愛らしい見た目からは想像できない酒豪っぷりにも驚かされた。で、確か最寄駅が一緒だということが判明して、所長から送り届けるように言われて一緒に帰ったんだ。で、ココはラブホ?なんでラブホ?…そうだ、最寄り駅で電車は確かに降りた。二人とも南口側に住んでて、北口側はあまり足を踏み入れたことがないって話になって、居酒屋に入ったら隣のカップルがかなりイチャイチャしてて…そうだ。オレからラブホに誘ったんだ…血の気がひいていく。で、ノリっていうか勢いでココに入って、一緒に風呂入って、なんでかエロいアダルト放送も一緒に見てソコに映ってたのが忘年会で景品に貰ったいわゆる電マで、試してみるかーって話になって…
「鈴木主任?顔真っ青ですけど、大丈夫ですか?」
いつの間にか戻ってきたのか、鈴木に話しかけられて現実に引き戻された。
「…あ、あぁ」
「コーヒー入りましたけど、飲みます?」
ソファの前のテーブルに置かれたコーヒーカップを指差す。
「あぁ。ありがとう」
オレに背を向けてソファの方へ戻っていくバスタオル一枚の後ろ姿が妙に艶かしい。慌てて自分の腰にもバスタオルを巻きつけ、ソファヘ向かう。…2人がけのソファなのに、隣に座らないのもヘンだよな。一瞬座る場所に迷ったが、鈴木の隣に腰を下ろした。
「備え付けのインスタントだから、あまり美味しくないかもしれないですけど」
「いや…ありがとう。いただきます」
「二日酔いにいきなりコーヒーは、胃に優しくなさそうでどうかと思ったんですけど」
「言われてみれば、そうだな。でも美味いよ」
「で、思い出しました?昨夜のこと」
いたずらっぽい笑顔で鈴木がオレの顔を覗き込む。
「…少し。本当に申し訳ない…」
まともに鈴木の顔を見ることができず、その表情を読み取ることはできない。
「…ひどい…私、初めてだったのに…」
うつむいてそう呟いた鈴木に驚き、コーヒーカップをあやうく落としそうになり、いそいでテーブルに戻す。
「鈴木…」
肩を震わせている鈴木になんと声をかけていいのかわからず、戸惑っていると鈴木が抱きついてきた。
「私、初めてだったんですよ。電マで責められるのも、潮吹いたのも…主任、もうやめてってお願いしてもやめてくれないし。で、失神しちゃって気がついた時には横で爆睡してるし、ひどいです!」
鈴木はオレの胸に顔をひっつけたまま、衝撃の事実を知らせてくれた。
「え、ちょっと待って…ってことは最後まではシテないってこと?」
「私が失神してる間に無理やり挿入とかしてなければ、そういうことですよね」
「お、おいっもうちょっと言い方ってもんが…」
「で、どうなんですか?」
「どうなんですかって…」
記憶を辿る。確かに電マで攻めたのは覚えてる。もうイヤとかダメとか聞いた覚えはある…そうだ。確かに何度かイかせた。初めて見る潮吹きってヤツに感動したのも思い出した。エロいだの散々言いながら攻め続けて…そうだ、鈴木が気を失って驚いて、でもなんだか気持ちの良さそうな顔してて、隣に寝そべって頭撫でてたんだ…で、オレもそのままいつの間にか寝たんだ…
「…ヤってないと思う」
「じゃあ、責任取ってくださいね」
「責任っておいっ、今ヤッてないって…」
ソファの上に膝立ちになった鈴木が、オレの唇を自分の唇で塞ぐ。舌が侵入してきて、耐え切れずに絡めてしまう。肌に当たる胸のふくらみが柔らかい。ダメだ、流されそうだ…
引き剥がそうとするとするが、鈴木は必死で抵抗する。それでも息苦しくなってなんとか呼吸をしようと引き剥がすと、鈴木の瞳は潤んでいた。