投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

夜明けのシンデレラ(♂)
【ラブコメ 官能小説】

夜明けのシンデレラ(♂)の最初へ 夜明けのシンデレラ(♂) 21 夜明けのシンデレラ(♂) 23 夜明けのシンデレラ(♂)の最後へ

夜明けのシンデレラ(♂)-22

やがて、目を覚ました私に、改めて智哉から話があった。

幼い頃に両親が亡くなって、養護施設で育ったこと。

高校卒業と同時に自立する予定だったところに、よく施設へ慰問に訪れていた奥 勘十郎氏が「よかったらうちで暮らさないか」と声を掛けてくれたこと。

ゲートボール界の第一人者で、東日本ゲートボール協会なるものを立ち上げた会長である奥先生の仕事を手伝い、行動をともにする中で、いつの間にか自分もゲートボールが上達して、指導者的な立場にまで成長したこと。

そして。
二年前に奥先生と始めた、平日朝6時からのゲートボール番組『みんなのゲートボール』。
最初は細々と高齢者にしか認知されない番組だったけれど、今年の春に番組情報が雑誌に掲載されたのをきっかけに人気が出て、気が付けば『王子』と呼ばれる程の状況になってしまったこと…。


どれも、私が思っていた智哉の現実とは全く異なる『真実』だった。

でも、それらを楽しげに語る智哉が、どれほどこの奥夫妻に大事にされてきたのかを知るには充分だった。


「…じゃあ、うちに来ても早朝4時30分に帰っちゃうのは…」
「6時からの生放送番組だから、5時にはスタジオに入らなきゃならなくて…」

「日曜日…は、奥先生と出かけてるんだよね?」
「東日本の各地で行われてる大会の視察に行ったり、ゲストで呼ばれたりするんだよ」

「出かける時、変装をするのは…」
「変装しないと、さっきのラウンジ状態になる」
「げっ!」

「最大の疑問!…智哉、本名って何なの!?」
「い、今更…。本名は『後藤 智哉』だよ。『元谷 透悟』は、テレビに出ることが決まった時に、恥ずかしいから本名をもじってつけた芸名」

(…なるほど、ね)

バカだぁ、私。
きちんと話をしていたら、こんなにも簡単にわかることだったんだね。

「――あのさ、桜子さんは前に『わかってるから』って言ってくれたでしょ。だから俺も、詳しいことを話さずにきちゃったんだけど…何か、あんまりわかってないって言うか、結局、あれは何をわかったってことだったの?」
「えっ…いや…まぁね」
「はっきり言っとけよ、姉ちゃん」
弟よ、お前は敵かっ!?

「あ、あの…奥先生のことを智哉が『奥さん』って言うから、結婚してると思ってたの。だから、朝早くに帰ったり、出かける時に変装したりすることも、不倫だからわかってるよっていう…」
「まぁ!そう考えてもつじつまが合うわねぇ」
梅子さんが、びっくりした様子で感心している。

――そうしたら。
そのやり取りを無言で聞いていた奥先生が怒り出し…現在に至る顛末。


「…でも、まぁ、全ての誤解は解けたんだもの。あとは、智ちゃんと桜子さんが幸せになる日が楽しみね、お父さん」
梅子さんの絶妙なタイミングのフォローで、ようやく奥先生が座ってくれた。

…いいな。
素敵だな、こんな御夫婦。


夜明けのシンデレラ(♂)の最初へ 夜明けのシンデレラ(♂) 21 夜明けのシンデレラ(♂) 23 夜明けのシンデレラ(♂)の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前