夜明けのシンデレラ(♂)-18
「…いいの、智哉。だって、そうしなきゃ私たちは一緒にいられないんだから」
私のお見合いだと思って、日曜日なのに駆けつけてきてくれた。
私のこと、大切な恋人だと言ってくれた。
…もう、それだけで充分だよ。
「でも、俺はもう、桜子さんにこれ以上辛い思いをさせたくはないから。だから――奥さんにも、全部話してきた」
「…そうな――えぇぇっ!?」
(ちょ、ちょっと待って…そんなことしたら…)
「な、何て言ったの?」
「何て…って、普通に『結婚したい人がいます』って言ったけど?」
…おいおい!
日本じゃ、重婚も一夫多妻も認められないっつーの!
「お、奥さんは…何て?」
「うん、『ようやくお前も一人前だ』って言ってくれた」
い、一人前…って。
出前じゃないですから。
「な、何かよくわかんないっすけど、えらい男前の奥さんみたいっすね…」
あぁ、央太なんてコーヒーこぼしちゃってるし。
「うん、素敵な人ですよ」
そりゃ、惚れて結婚した相手でしょうからね。
「…桜子さん」
「は、はいっ!?」
智哉が、真剣な眼差しで私を見つめる。
「俺と、結婚して下さい。俺は…ずっとずっと、桜子さんと一緒にいたいです」
「智哉…」
女の子なら幼い頃から誰もが夢見る、好きな人からのプロポーズ。
…心から、嬉しい。
私も、ずっとずっとずっと智哉と一緒にいたいよ。
――でも。
「智哉…ダメだよ。私たちは、この国では認めてもらえないよ」
「えっ!?な、なんで?」
「だって、それは罪になるんだよ。…あぁ、アフリカとかへ移住したら許されるのかな…」
「ア、アフリカ!?」
「おぉう、イッツ・グローバル…」
央太、うるさい!
「さ、桜子さん…何か誤解してない?」
涙目でこれから先を真剣に考えてる私に、智哉が困ったような顔で尋ねる。
「誤解じゃないわ。ちゃんと重婚だって理解してるわよ」
「――重婚!?」
「もしくは、一夫多妻」
「…あ、なるほど。だからアフリカね」
何、納得してんのよっ!
「…フゥ」
笑いを飲み込んだようなため息が、智哉からひとつ。
「桜子さん、あのね…」