明子と朱美の会話・・3-1
(その3)
高層ビルにある午後のレストランで、二人の女はくつろいでいた。
お互いに気心が知れており、
心から、何でも言い合える友人とお互いが思っていた。
しかし、二人の友達としての歴史は長いわけではない。
二人が出会ったきっかけは、他愛のない共通の趣味で知りあい、
その時に意気投合したからだった。
故に、強いて言えば、お互いの本当の心がどこまで分かっているか・・
と言えば、定かではない。
しょせん、友人とはこういうものを言うのだろう。
固い絆で結ばれていると思っていても、
大したこともなく、些細なことで相手に不信感を持ち、
あれほど強いと思っていたお互いの心の絆が、もろくも崩れ去る・・
ということも良くあることである。
いずれにしても、人の心ほど不可解なものはない。
人間は誰でも、自分の持つ欲望を持っており、
それを、他人が推し量ることは出来ない。
それでも周囲と調和しながら、少しずつでも、少しでも欲望を満足出来れば、
そのことは、この上ない幸せと言える。
しかし、その欲望を期待以上に求めると、
それが思わぬ結果を招くことに成りうるのだ、
故に、誰も結果を予知することは出来ないのである。
そこに人生の面白味があるのかもしれない。
この二人の女も、まさにその渦中にいた。
年齢の割には色気のある朱美は、
仲の良い明子に、自分の気持ちを打ち明けたかった。
久しぶりに高ぶる気持ちを誰かに伝えたかったのである。
だが、その相手は誰でも言い訳ではない。
少なくても、自分の性格を理解し、彼女の理解者でなければならない。
それは明子しかいなかった。
こんなプライベートで、
生々しい話を出来るのは彼女しかいなかったのである。
朱美には子供はいないが、もしいるとすれば、
息子程の年齢の少年との情事に酔っているいま、自分自身に酔いたかった。
この歳になっても、まだ(私は女なの、女として認められているの)
と、心の中で、叫びたかった。
(どう?明子さん、私を見て・・
この歳になっても、私は若いツバメとセックスをしているのよ、
凄いでしょ、私もまだまだ捨てたものじゃないわ、貴女も頑張ってね)
と、心から言いたかった。