非線型蒲公英 =Sommer Marchen=-4
「フフ、その慌てっぷり、愉快よ。聡」
琴葉が鮭の塩引きを頬張りながら、心の底から可笑しそうに微笑んだ。
「あはは、お母さんはホントに聡君の事が好きなんだね」
悠樹は場違いな程朗らかに、自分の母が自分のイトコを襲っている様を見て、そう感想を漏らした。
「姉さんも!! 悠樹も!! どうしてそうなる!! 助けてくれ!!」
期待するだけ無駄というモノだが、もう、溺れる者は藁をも掴むと言うか、掴む物が無くて水を掴もうとしているような気持ちであった。
「ここだと恥ずかしい？ じゃ、部屋に行こうか、聡クン」
冴子は眼鏡を外し、シャツの胸元に引っ掛けると、長い髪を掻き揚げながらそう言った。
「そそ、そういう問題じゃ無いですから!!」
「私はギャラリーが居ても一向に構わないんだけど、聡クンが二人きりが良いって言うなら、そうしようか」
聞いちゃいない。聡の返答を都合よく解釈されている気配すらある。もう、聡にはどうしようも無かった。
「か、勘弁してくださいぃ〜!!」
しかし、その聡の叫びも、誰の耳にも届かなかった。