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非線型蒲公英
【コメディ その他小説】

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非線型蒲公英 =Sommer Marchen=-35


「『KY-01-R アンファング』。さっき、聡を撃った張本人(?)よ」
「嘘だろ!? 今の、20cm位しかなかったぞ? そんなに小さくて、ヘクセンと同じビームが撃てるのかよ!?」
「ええ、ヘクセンの実働データを流用した改良型ですもの…まあ、もっとも、余りに詰め込みすぎてしまったから、動作が少し不安定だったりするのよね。だから、さっき、実験をしてみたのだけれど、結果は起動、照準、発射、共に+0.3秒以上のラグ。あまり良い数字では無いわね」
「へぇ…そう」
 撃たれたのが他ならぬ自分なので、聡は、どうリアクションしたら良いのか解らなかった。
「まあ、高速動体を射撃する事にでもならない限りは、大きな問題は無いわ」
「いや…俺にそんな事を説明してどうするんだ? 姉さん」
「もちろん、燐に説明してもらう為よ」
「え…!? 俺はそんな事までしないといけないのか!?」
「嫌なのかしら」
「嫌だよ!! って言うか、覚えられないよ!!」
「仕方ないわね…説明云々は、ヘクセンに任せましょう」
「へ、ヘクセン? あいつはさっき、姉さんに…」
「ええ、そうね。確かに外装は、ほぼ行動不能な状態だけれど…中枢のステッキだけを取り出せば、それだけでも一応、行動は可能なはずよ」
 それはつまり、一時的に棒に戻ると言う事だ。ヘクセンが泣いて悔しがりそうだ。
「と言う訳で、さあ、行ってらっしゃいな。燐が待ってるわ」
 殆ど追い出されるような形で、強引に俺とアブリス(と棒ヘクセン)は、家を出る事となったのだった。


 燐の家へと向かう道中。聡の予想通り、二人(聡とアブリス)の間には気まずい空気が漂っていた。
「えー…と、アブリス、ちゃん?」
「…、…」
 無視。と言うか、近づいて来もしない。
『何があったんですか!? ハッ…!! まさか、本当に手をだして…!?』
 棒の状態になったため聡に掴まれて運ばれていたヘクセンが、痛い所を突いてきた。
「いや…別に」
 どうしても、声が上擦ってしまう。
『へぇ…!! 怪しいですネェ!! えっと、KY-02の…幼女さん!! 弟様に何かされたんですか!?』
 いくら、名前を覚えるのが苦手だからといっても、酷い呼び方だった。
「え…? あ…な、何も、されてないよ…大丈夫だから…ヘクセンちゃん」
 アブリスが俯いて答える。が、その態度が『何かあった』と如実に語っていた。
『そ、そうですか…!? ところで…ヘクセンちゃんとは!? それは私の事ですか!?』
「ご、ゴメンね…いきなり、馴れ馴れしかったかな…? 琴葉様から、ヘクセンちゃんは、わたしの妹だって聞いたから…」
『まあ、確かに!! 同系列機の中では型番が早いですからね!! 幼女さんと、そこに浮いてる光学迷彩装備のニンジンさんのお二人は!! …む!? 『我輩がニンジンならば、お前は棒であろう』ですと!? は、腹の立つニンジンさんですね!!』
「え…? ヘクセンちゃん、兄様と話せるの…?」
『は!? と言うか、幼女さんは話せないんですか!? 私はビームラインで会話してるんですが!!』
「ご、ゴメンね…わたし、そういう機能、持って無いの」
『別に謝る事ではありませんよ!! むむ…そうですネェ…!! 私の機能を少しダウンロードすれば、話せる様になるかもしれませんよ!?』
「ほ、本当、ヘクセンちゃん!?」
 アブリスは、期待と驚きの混じった表情で、聡の手の中にあるヘクセンを見つめた。
「盛り上がってるなあ…俺を除け者にして…ハハ」
 ここに居て聡は、疎外感に包まれていた。
『ハイ!! では、早速試してみましょう!! …という事で、弟様!! 私を幼女さんに渡してもらえますか!?』
「ん…? ああ」
 言われた聡は、拒む理由もなかったので、アブリスに手渡そうと近づく…が、
「ぅ…」
 近づいた分だけ、向こうも離れてゆく。


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