非線型蒲公英 =Sommer Marchen=-33
「でも…それは別に、俺がしなくても大丈夫なんだろ?」
『ええ、それは、ね。…ただ、今それを出来るのは、貴方か私だけでしょう? 聡は、自分の姉が背徳的な行為に及ぶ情景を見て悦ぶ様な、そんな捻くれた性癖の持ち主だったのかしら? 私は悲しいわ…』
ね、姉さん…あんたって人は…。
「クソ…俺にやれって言うのか…」
まるで、『親友を撃ち殺せ、さもないとお前を殺す』とでも言われたような気持ちだった。
『簡単な事でしょう?』
物理的には確かにそうだが、精神的には絶対にそうではない。
「う…」
目の前で寝息を立てている少女を見下ろす。先程とは違って、生命が感じられるその仕草に、思わず心臓が高鳴る。
駄目な人なのか…? 俺は…俺という奴は…。
「こ、これに…キスをしろっていうのか…?」
『さっきから、そう言っているでしょう?』
「無理だろ…」
『あら、硬いのね。もっとフランクな感じで、さっさとやっておしまいなさい』
「出来るかっ!!」
ここで一時の感情に流されてしまったりなんかしたら、きっと恐らく、俺は後悔と自己嫌悪に苛まれる事になるだろう。
『モラルを気にしているというのなら、無駄というモノよ。それは、人では無いのだから』
「でっ…でもなぁ…」
ああ、姉さんが余計な事を言うから…俺の『理性を捨てて衝動的に行動してしまえゲージ』が、54から76に増えてしまった…。
『そうやって、無駄に気にしている方が、恥ずかしいのではなくって?』
「うっ…!!」
更なる姉の一言により、俺の『理捨衝行ゲージ』が…132(注:MAX100)に。遂に野生が振り切れてしまった。
「や…ヤッテヤル…恥や外聞など知った事か…やってやるぞ!! 畜生ぉっ!!」
『フフ…その意気よ』
あからさまに楽しんでいる姉の様子が解らなくなる程に、聡は暴走した。
「キスだァ!? ハッ…!! いくらでもヤッたるわ、ボケェ!!」
面白い位に性格が豹変していた。
そんな暴走聡は、少女を強引に抱き寄せると、無抵抗なその唇を奪った。
と、それがスリープモードの解除パスとなっていた少女――アブリスは、目覚めた瞬間、自分の身に、最初にして最大の危機が迫っている事を体感する事となった。
「…ん〜っ…っ!! い、いやっ!! 何!? 何するんですかっ!?」
唇を身をよじって離し、目の前の非常に危険な強姦魔(聡)から離れようとするが、ヘクセンとは異なり、戦闘及び自衛に関する機能を律する術を持たないアブリスは、掴まれた状態から全く動けなかった。
「大人しくしてなァ…お嬢ちゃん!! 少し黙ってりゃ、スグに終わるからヨォ…!! ヘッヘッヘ…」
言いつつも、アブリスを押さえていない方の手では、既に服を剥きにかかっている。ヤル気は現在1000%OVER。言動が暴走し過ぎである。
「や、やだやだやだっ…!! 何でっ…どうしてこんなこと、するんですか…!?」
見る間に肌蹴させられていくアブリスが、涙(擬態冷却水)をぼろぼろと零しながら真っ赤になって訴える。が、それは聡の嗜虐心をくすぐる効果しか与えなかった。
「ヘッ…一丁前に人間様の真似なんぞしやがって…アアンッ!? どこまで人間と同じに出来てやがるんだァ!? ヘヘ…俺様が確認してやるよォッ!!」
と、今日日、三流悪役でも言わない様なお約束を口にしつつ、聡は堕ちる所まで堕ちつつあった。
「やだっ…こんなの…いやだよぅ…!!」
もう、これ以上やったら色々な面で問題に触れるぞ…という寸前に、それは起こった。