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非線型蒲公英
【コメディ その他小説】

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非線型蒲公英 =Sommer Marchen=-21

 だが、ヘクセンは幸いにして(?)無事だった。
 これも、バージョンアップに伴う追加装備のおかげである。
「何ですか!! これは!! どういう事なんですかぁっ!!」
 部屋に帰還したヘクセンの姿は、何と言うか、アレだった。
「…ヘクセンさん、どうしたんですか、その…服は」
 今のヘクセンの姿を、一言で表すならば『魔女っ子』であろう。過去にヘクセンが立体映像で見せていた魔女っ子の衣装、そのままである。無駄にフリフリでキラキラしていた。
「それはイタイぞ…かなり」
 聡は眉をひそめ、哀れみが滲んだ声で言った。
「誰が、好きでこんな格好をしますか!! 急にこんな風になったんですよ!! 私の意志とは関係なく!!」
「ああ、教えてなかったけれど、それは緊急回避装置よ」
「緊急回避装置ですか!? コレが!?」
「ええ、耐久性能を遥かに上回る衝撃が加わろうとした時にだけ発動する、電磁バリアフィールド。そして、その服はオマケ」
「オマケって、どういうことですか!? 琴葉様!!」
「だって、ただ電磁バリアフィールドを形成してもつまらないでしょう? その中で『変身』でもするならばまだしも、ね」
 可愛くなった、というよりは、不気味になった、といった方がしっくりくる姿のヘクセンを眺めつつ、琴葉はいやらしく微笑んだ。
「また姉さんは、趣味で変なモノを…」
「変とは心外だわ。機能性と装飾性を両立するのが私のポリシーなのよ」
 機能性はともかく、姉の言う装飾性については、疑問ばかりが浮かんでくる聡だった。
「…とにかく、着替えたらどうですか、ヘクセンさん」
「着替えたいのはやまやまなんですが!! 丁度、替えのメイド服をクリーニングに出してまして!!」
 そのクリーニング屋さんは、きっと困惑したんだろうな、と、妃依は思った。
「出来れば!! 琴葉様の服を貸していただきたいのですが!! 構わないですか!?」
「構うわ」
「そんな!! それじゃあ私は、こんな痴女っぽい服で暫く過ごさないといけないんですか!?」
「そうなるわね」
「あんまりですよ!! 琴葉様!! …ああ!! これも全てはマスターの所為!! 何とかしてくださいよ!! マスター!!」
 琴葉に何を言っても無駄だと判断したヘクセンは、その矛先を妃依に向けた。
「…はぁ、だったら、聡先輩から借りたらどうですか」
「なるほど!! それは思いつきませんでしたね!!」
「おいおいおいおい!! 誰もまだ、貸すとは言ってない…」
 聡がそうツッコミ終わる間もなく、
「早速、着替えてみました!!」
「早っ!!」
 ヘクセンは、聡の部屋へと駆け込み、着替えを終了させてきた。その間4.18秒。
「…あ、でも…結構似合ってますね」
 ヘクセンの背丈は、聡よりちょっと低い位だったので、意外とすんなり着こなしていた。ラフなファッションと言えば、そう見えなくも無い。
「今さっき着てた、あの服はどうしたんだよ」
「はい!! タンスからこの服を取り出した時に出来たスペースに、丁度収まりそうだったので!! 入れておきました!!」
「馬鹿か!! あんなもの入れるな!! 俺が変態みたいじゃないか!!」
「…変態ではない、とは言い難いですけど…」
 膝の上に乗せたサリィをあやしながら、妃依がボソッと呟いた。
「ひ、ひよちゃん…そんな風に見えてるのか、俺は」
「…ええ、まあ」
「はっはっは!! 弟様の変態っぷりと言ったら!! 底なしですからね!! 何しろ!! ベッドの下やら、枕の下やら、机の引き出しの奥には、口外するのも躊躇われる様な代物がゴロゴロありますからね!! いよっ!! 変態!!」
「そんな物は無い!! 断じて無いっ!!」
 無い訳ではなかったのだが、少なくとも、今、ヘクセンが挙げた場所には無かった。
「…すごいのとか、ありそうですけどね」
 やはり、サリィから目線を逸らさずに妃依は呟く。
「す、凄いのって何だよ、ひよちゃん」
「…それは、ちょっと…私の口からは」
「つまり!! 『女教師』とか!! 『義理の妹』とか!! 『喪服美人』とかが!! 『緊縛』されたり!! 『集団暴行』されたり!! 『排泄』させたれたりするような…っがはぁ!!」
「…そんなに、詳しく説明しないでください…」
 微妙に顔を赤らめた妃依は、サリィ片手に立ち上がり、空いた片手でヘクセンをしばき倒していた。


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