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非線型蒲公英
【コメディ その他小説】

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非線型蒲公英 =Sommer Marchen=-2


「例の前フリが必要なのですよ!! マスターの場合!!」
「…電話帳から調べるからいいです」
 妃依は即座に振り向いて、電話の横に置いてある電話帳に向かった。
「そっ、そんな!! マスター!! ノリが悪い!! ここで『解ったわ!!』とでも言ってもらわないと話が進みませんよ!!」
 がしっ、とヘクセンに肩を掴まれた。
「…放してください、絶対に嫌です」
「ビジュアル的にも地味な電話帳検索より、動きのある呪文詠唱の方が素敵ですってば!! マスタァーッ!!」
「…意味不明です」
 前に進もうと力を込めるが、ヘクセンの腕力は尋常ではなかった。流石は琴葉先輩が作っただけはある。
「無駄ですよ!! マスター!! ついこの間バージョンアップを施してもらったお陰で、同系列機すら凌駕する出力を得る事が出来たんですから!!」
「…同系列機って、何ですか」
「よくは覚えてませんが!! 『れーべんなんとか』やら『きるしゅなんたら』とか!! そんな感じの名前です!! まあ、雑魚ですね!!」
「…嘘…アレより強いんですか」
 あんな物騒な機体よりも強いとは…いよいよ非常識の度合いも最高潮だ。
「ふっふっふ!! そうです!! 強いんですよ!! それでも、こんな素敵な私よりも、あんなみすぼらしい電話帳を選びますか!?」
「…はい」
「マ、マスター!! 酷い!! ありえません!! ここで使ってもらわないと私の存在意義が!!」
「…というか、使うってどうやって…棒の形してないじゃないですか、ヘクセンさん」
 まさか、そのまま振り回せ、という訳でもあるまい。
「そ、そうですね!! う、腕とか!? 取り外しましょうか!?」
「…怖い事言わないでください」
「多分!! マスターがその気になれば!! 出てきますよ!! ステッキ、の様な物が!!」
「…多分じゃ、ちょっと」
「ステッキがあればその気になってくれるんですね!?」
「…それは、微妙な所ですけど…」
「出しますよ!! 出して見せますとも!! さあ、ご覧あれ!! エレクトロシュヴェルト!!」
 ヘクセンの右手首の付け根から、電気を纏った40cm程の剣が現れた。
 バージョンアップに伴ってジェネレーターを強化したお陰で、使用可能時間が格段に延びたのだった。
「さあ、これをお使いください!! マスター!!」
 触ったら死ぬ。妃依は一目でそう感じた。
「…他のがいいです…それはちょっと」
「贅沢な事を言わないでください!! これ以外の…棒なんて!! ぼ、棒なんて…ッ!! だ、誰が棒ですかァァァッ!!」
 トラウマスイッチオン。ヘクセンは暴走した。
「…落ち着いてください」
 どうにも話がおかしな方向に横滑りしている。どうにかしなければならない。
「…それより、絶対にあの前フリは必要なんですか」
「ええ!! それはもう必要ですとも!! 何しろ現在『留守番』のタスクが最上位命令ですから!! それを上回る命令を出すには、どうしてもあの前フリが必要なんですよ!!」
 厄介だ…。妃依はげんなりした。
「…いいです、もう、帰ってから調べます」
 玄関へと回れ右をする。
「だあああああぁぁぁぁっ!! そんな、酷い!! 私を自由にするコマンドを出してください!! ああ、留守番はイヤ!!」
 結局、それが本音らしい。
「…はぁ、解りましたよ」
「ホントですか!? マスター!! いやあ!! 流石はマスター!! 解ってらっしゃる!!」
「…で、どうすればいいんですか」
「暫しお待ちを!! 装備品一覧を検索しているので!! …ああっ!! ありました!! 何とフトモモのスロットに入っていたとは…!! 盲点でしたね!!」
 そう言って、ヘクセンは長いスカートをたくし上げると、太腿の横から何やらゴテゴテしたステッキを取り出した。
「ささ!! どうぞ!!」
 差し出されたステッキを前に、妃依は言葉を失っていた。


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