「超合体浪速ロボ・ツウテンカイザーU〜オゲラ〜」-1
宇宙船のメインブリッジ。正面のモニターには火星が大きな顔を覗かせている。そして火星の手前には衛星ディモス。火星の大きさと相まって、今はことのほか大きく見えている。
また、船室の傍らには半裸の金髪美女が鎖で張りつけにされており、その側で、モニター越しに見える火星を、ドジョウ髭の男が愉悦に歪んだ顔で見つめていた。
男の名前はミンタム皇帝。自称宇宙最大の科学者にして支配者。その風体は怪しげな東洋人で、まるで昔のアニメに出て来る魔法使いのような格好をしており、大袈裟なローブに悪趣味な指輪をごてごてとはめ、手にはガーゴイルを象った金色の杖を持っている。悪い魔法使いというなら話も分かるが、どう見ても宇宙最大の科学者には見えない。そして勿論、宇宙最大の科学者と言ってもカーチス・ニュートンとは縁もゆかりもない。
そして、その宇宙最大の科学者にして支配者、ミンタム皇帝は杖に彫られたガーゴイルの頭を神経質そうに撫で回すと、窓の向こうに見える火星をそれで指し示した。
「見よ、あの赤く燃える美しい星をっ!!あの美しく輝く星を、今度こそ我が手中に収めるのだっ!!」
芝居掛かった調子で告げるミンタム皇帝。その恐ろしい表情に、金髪美女はたわわな乳房をゆさゆさと揺らし、絹を引き裂くような悲鳴を上げる。
「きゃぁあぁあああああああっ!!」
いささか過剰な悲鳴であったが、ミンタム皇帝は気にする様子もなく、よく分からないスイッチが付いた目の前の金属板をあれこれといじり回す。すると、今まで火星が映っていたディスプレイに、今度はアナクロな巨大光線砲が映し出された。
「見よ、見よ、これこそが我が最大の発明、惑星破壊地獄光線砲じゃっ!!この地獄光線砲を使って火星政府を追い出し、全てのドーム都市を我が配下に納めるのじゃっ!!!」
「きゃぁあぁあああああああっ!!!」
世にも恐ろしい計画を聞かされ、金髪美女は再び悲鳴を上げた。さすがに耳に響いたのか、今度はミンタム皇帝もわずかに眉根を寄せるが、やはり気にせず、少し耳を押さえるだけにとどめる。さすが宇宙最大の科学者にして支配者と言うところか。
「くくく…、もはや火星は我が物になったも同然。如何にキャプテン雷蔵といえど、地獄光線の前には宇宙船もろとも塵となる運命よ。ふふふ、来るなら来てみろキャプテン雷蔵っ!!」
「きゃぁあぁああああああああああっ!!!!」
「……っく、………うっく、ともあれ、今までさんざん煮え湯を飲まされてきたが、それも今日限りよ。わはははは…!!」
耳を押さえながらも、勝ち誇った様子で哄笑するミンタム皇帝。しかし、その笑い声を、突然何者かが遮った。
「悪事もそこまでだっ!ミンタム皇帝っ!!」
「うぬ、何奴!?」
「きゃぁあぁあああああああああああああああああっ!!!!!!!」
「宿敵の顔を見忘れたか、ミンタム皇帝っ!この私、キャプテン雷蔵の顔を!」
扉を破って突如現れる謎の英雄キャプテン雷蔵。十文字博士そっくりのその男は、パイロットスーツに身を包み、背中にはロケットエンジンを背負い、手にはレトロフューチャーな光線銃を持っている。