「超合体浪速ロボ・ツウテンカイザーU〜オゲラ〜」-7
「何かないのんか?お父ちゃん…」
「何か、言うても…、前回の戦いに使われたもんは一切防御策が考えられてる筈やし…」
考え込む十文字博士であったが、オゲラは呑気に攻撃を待ってはくれない。オゲラは羽を広げて跳躍すると、一気に間合いを詰めてきた。
『ノォオウワッ!??』
虚を突かれ、殴り倒されるツウテンカイザー。何とか立ち上がり、体勢を立て直そうとするが、オゲラは畳みかけるように殴りつけてくる。
『グゥオオオッ!!』
上半身を丸め、防御をしても、その上からオゲラは容赦なく殴りつけてくる。
「どないにかならんのかいなっ!?」
「何とかして離れなきゃっ!!」
激しく揺れるコクピットで、ひよこと恭子は悲鳴を上げる。
その様子を、深刻な表情で睨み付ける十文字博士。
「オゲラが格闘戦しかしないのは、兵器を搭載した時点でそこが弱点となるからや…。ほんま、付け入る隙がない。絶対防御の外殻で覆われたオゲラは、まさしく難攻不落…。」
「こらぁあっ!!冷静に分析しとらんで、何とか打開策を考えんかいなぁっ!!」
揺れるコクピットの中で、ひよこは十文字博士に詰め寄るが、いくら考えても打開策は浮かばず、十文字博士は眉間に皺を寄せて考え込んでしまう。
「こ、こらあかん…、お母ちゃん、堪忍。先立つ不幸をお許しください…。アーメン、そーめん、冷やそーめん…いや、冷やしチュウ冷麺、やったかな?」
ひよこはついに操縦舵から手を離し、手を組んで神仏に祈り始める。そこへ、恭子の悲鳴にも似た叱責が飛ぶ。
「莫迦ぁっ!!ひよこっ!!もーお、何考えてるのよっ!!そんな簡単に諦めないでよぉっ!!」
「そやかて、こんな状態でどないせい、言うのん!?」
最早絶体絶命。
恭子ですら目を固く瞑り、諦めかけたその時、散発的な破裂音がして、不意にオゲラの攻撃が止まった。
「なんやの?」
「…あ、あれはステルス・ホーク!?」
見ると、前回の戦いで王鷹が搭乗し、爆発四散した筈のステルス・ホークがオゲラにまとわりつき、効かないまでも攻撃を仕掛けていた。
怒りの咆哮をあげるオゲラ。
「今や、通天剣っ!!」
一瞬の隙をついて通天剣を取り出すツウテンカイザー。
『ドォオリャァアアアッ!!』
カイザーは渾身の力を込めて剣を振り下ろすが、オゲラの前肢に阻まれる。
「くそぉっ!通天剣も効かんのか…」
「でも、剣でやり合えばツウテンカイザーにはダメージを受けないわっ!」
いわゆる千日手にも似た状況に陥るが、それでも撲殺されるよりはましである。
「この、この、この、こんのぉおおっ!!!」
ガインガインと耳をつんざく音を立てながら、必死に剣を振り下ろすツウテンカイザー。
「こ、このままこれを続けて、なんか意味があるんやろか…」
何とも情けない状況に、ひよこは苦々しい表情を浮かべる。そこへ、上空を飛び回っているステルス・ホークから、何者かの通信が入った。
『身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ。……諦めるなっ!』
聞き覚えのある声に、ひよこは驚きの声を上げた。
「お、王鷹の兄ちゃんかっ!?生きとったんかっ!」
「そ、そんな筈無いわ、ひよこ。私達は王鷹さんの埋葬に立ち会ったじゃないっ!」
「そ、そやかて、今の声は王鷹の兄ちゃんにそっくりやったし、ステルス・ホークに乗っているんは王鷹の兄ちゃんしか……。なあ、王鷹さんっ?王鷹の兄ちゃんなんやろっ!!なんで返事してくれへんのぉっ!!」
ひよこは必死に呼びかけたが、ステルス・ホークからは返信がなかった。そして、いつの間にか姿を消すステルス・ホーク。
「な、なんで返事してくれへんの?王鷹さんなんやろ…?」
王鷹の死に、自責の念を感じていたひよこは、王鷹が生きていると信じたかった。しかし、恭子の言う通り、ひよこも王鷹の死体を確認している。かぶりを振り、操縦桿を握り直すひよこ。
「あれはきっと王鷹さんじゃないわ。ステルス・ホークに乗っているからって、王鷹さんとは限らないもの…」
恭子はなだめるように語りかけた。勿論、恭子にしても王鷹の生存を否定したくは無かったが、だからこそ、通信の声が王鷹のものに聞こえたとも思える。
「通信機が伝える音域は意外に狭い。男性の声なら間違う可能性も高いやろ…」
十文字博士も心配して声を掛けるが、聞いているのかいないのか、ひよこは大きく深呼吸すると、頬を叩いて気合いを入れ直した。