「超合体浪速ロボ・ツウテンカイザーU〜オゲラ〜」-4
ひよこの言い分に、唇を歪めるスチュワルダ。実際、街の声はひよこの言ったようにツウテンカイザーを評価しているのだからスチュワルダは余計に苦々しく感じていた。ましてや、こんな生意気な娘に勝ち誇った顔をされたのでは無性に腹が立つ。
「そもそも、あんな物騒な破壊兵器を個人が所有していること事態が由々しき問題なのですっ!!火星人がどうであれ、あの訳の分からないロボットは撤去、廃棄します。刑罰は不問に付すというのだけでもありがたく思いなさいっ!!」
「そんな殺生なっ!!大体、ツウテンカイザーは破壊兵器やないでっ!ましてや訳の分からないロボットなんかやない!!ツウテンカイザーはツウテンカイザーやっ!!」
「それが訳の分からないことだというのですっ!!そもそもあれだけ物騒な兵器を搭載していて破壊兵器ではないという理屈が通じますかっ!」
「違うっ!!ツウテンカイザーは惑星開発ロボットやっ!!」
「わ、惑星開発って…。無駄に合体変形なんかして、その上やたらとミサイルやら光学兵器を搭載して、挙げ句にドリルやら巨大な刀やら振り回してそれのどこが惑星開発ロボットなのよっ!!!」
ひよこはスチュワルダの詰問に言葉を詰まらせた。ひよこ自身、ツウテンカイザーを惑星開発ロボットというにはほんのちょっぴり物騒かな、とは思っている。
「ミ、ミサイルやらドリルは土木作業に使うもんで…、刀は……か、刀は…」
「刀は何よっ!!!」
「……か、刀は…刀は溢れるロマンやっ!!」
ひよこは何とか正当性を見つけようと必死に考えたが、刀はどう考えても戦うための物である。削岩用とか言えなくもないだろうが、その時のひよこには通天剣は本当にロマンを感じる物に思えたのだ。
その場に居合わせた職員達は半ばひよこの意見に頷きながら、声を殺してくすくすと笑った。しかし、スチュワルダは呆気にとられ、言葉もなく、言い放った当のひよこも苦々しい思いで口をつぐんだ。
「と、ともかく、あのロボットは廃棄して、この研究施設からは一般人は出ていってもらいますからねっ!!」
開き直り、そう押し付けるように言い放つスチュワルダ査察官。そこへ、今まで沈黙していた十文字博士がスチュワルダに歩み寄り、その白く柔らかな手を自分のごつごつとした手で包み込んだ。
十文字博士が何か懐柔策に転じたと見たスチュワルダは、警戒して眉間にしわを深く寄せた。しかし、十文字博士はスチュワルダの手をじっくり暖めると、真剣な面持ちで口を開いた。
「ないすばでぃな金髪ぷりてぃ〜お嬢さん…。話はよく分かりました。あなたのような素敵な巨乳ギャルに頼まれたのであれば、否応もありません。即刻あの訳の分からないロボットは解体いたしましょう…」
十文字博士の信じられない言葉に、ひよこは思わず悲鳴を上げる。
「お父ちゃん、自分で何言うてんのか分かってんのんかっ!!!」
しかし、十文字博士の耳に、貧乳の娘の言葉など届きはしなかった。改めてスチュワルダの手を、ぎゅっと握りしめる十文字博士。
「…その代わり」
スチュワルダの瞳を、十文字博士は覗き込む。
「その代わり、お嬢さんの生乳の先っぽを、ほんの少しだけ摘ませてもらえませんか?」
次の瞬間、声にならない悲鳴が轟き渡り、スチュワルダの鉄拳とひよこの回し蹴りをまともに食らった十文字博士は、口から魂をしゅうしゅうと吐き出しながら横たわった。瞳ががくがくと痙攣する十文字博士であったが、スチュワルダもひよこも一瞥すらくれない
「取り敢えず、ロボットは当面起動させることを禁じ、民間人は即刻この施設から退去してもらいます」
スチュワルダは気を取り直すと、軽く咳払いをして念を押すように告げた。しかし、承伏しかねるひよこは尚も食って掛かる。
「そんな阿呆な…。今日、明日にでも火星人が攻めてくるかもしれんのに、ツウテンカイザーを封印して丸腰になんかなれるかいなっ!!」
「その心配は御無用。火星人は連合の防衛軍が撃退しますっ!」
「その防衛軍が当てにならん、言うてんのやっ!!現に、こないだの戦いでは全然、糞の役にも立たへんかったやないかっ!!」
「(ひよこ、ひよこ…、お下品だよ)」とは恭子。
「ともかく、ともかく、ともかく、民間人が個人であれだけの機動兵器を所有することも、運用することも禁じます。もし法に触れる行為が行われた場合は、あなた方を犯罪者として扱いますのでそのつもりでっ!!!!」
最早、否応もなかった。ひよこは不承不承ながらも口をつぐみ、恭子も口を差し挟むことは出来なかった。